立禅射法:腕を使わない引き方3つのポイント

こんにちは。高橋大智です。

今日のテーマは「弓と禅の射」について。長年弓道を通して学び、実践してきた内容を、完全版としてお届けします。

この解説を読めば、弓道における美しい射型や的中率を上げるための禅的な引き方が、なぜ重要なのか、その理由がはっきり分かるはずです。

弓道と禅の関係

まず最初に、弓道における禅の役割についてお話しします。

戦後の弓道は「正射必中」、つまり美しい形で的中を目指すものとして普及しました。

しかし、戦前や海外での弓道の認識は異なります。

多くの人が、弓道は禅を体現するものだと捉えています。

実際に、弓道で美しい射型を目指すための基礎には、禅の考え方が深く根付いています。

例えば、射法を始めて開発した人は、日置弾正正次氏です。彼は「仏教の概念を學ぶために射法がある」とも解説しています。

そこから、射法を学ぶことは精神的な内容を学ぶためと解いた人は多くいます。本多利実、阿波研造、梅路見鸞など、彼らの解説した文章の記述には「美しい形は結果として身につくものであり、目指すものではない」と解説しています。

ただ形だけを追い求めるのではなく、流れるような自然な動きや精神の整え方を重視することで、弓道の本質に触れることができるのです。

本質的にゆみの引き方を勉強することで、皆様が求める「基礎」「綺麗な形」「的中」が手に入ります。

つまり、いきなり形を求めようとしないでください。弓道で言われる綺麗な形は見て学ぶのではなく、もっと本質的に勉強しないといけないとわかります。

既存の八節の型を意識すると、腕が力む

弓道の基本として知られる「八節」は、射の各段階における体の動かし方や形を定めたものです。これらは一見すると射を正確に行うための基礎として役立つように思えますが、実は過度にとらわれると射の本質を見失い、うまく弓を引けなくなる原因になることがあります。

以下に、八節の決まり事を列挙します:

  1. 足踏み
    足の角度を60度に開き、矢の長さの半分の幅を基準に足を広げる、両足先を的の中心に揃える
  2. 胴造り
    胴を真っ直ぐに保ち、心気を丹田に収め、安定した姿勢を作る。
  3. 弓構え
    弓を水平に持ち、取り掛け、手の内の形を整えて、弦と矢をしっかり持つ。
  4. 打起こし
    弓を45度の角度で持ち上げ、上体に余計な力が入らないようにする。
  5. 引き分け
    弓を左右均等に引き分け、両肩、両拳の高さが並行になる。

  6. 三重十文字、伸び合い、詰め合いを意識する。
  7. 離れ、残心
    左右の拳の高さが同じ高さになる、左拳は落ちないようにする、弓が左手の中からずり落ちないようにする

これらの決まり事を既存の弓道では学び、稽古で意識します。これらの形式的な内容そのものは悪いものではありません。しかし、問題はこれらの形を「正確に守らなければならない」という意識が強すぎる場合に発生します

形に固執することで、かえって体が緊張し、自然な動きが失われてしまうのです。

例えば、「足踏み」で矢の長さの半分の幅に厳密に足を広げようと意識しすぎると、足の位置を固定することに集中しすぎて、もう脚に力んでいませんか?逆に、多少足先がずれてもよく、60度くらいに開くように足先を広めに意識して開きましょう。そうすると、脚の余計な力みが少なくなって、上半身の力みが取れます。

もっとわかりやすい例えを出します。打ちおこしで45度にあげるのを意識しましょう。

「打起こし」で45度の角度を厳密に守ろうとすると、弓を持ち上げる際に腕や肩に余計な力が入り、動きが不自然になります。ところが、「だいたい45度くらい」と軽く意識してあげるようにしましょう。そうすると、両腕の力みが抜けて、次の引き分け動作が入りやすくなるのがわかります。

同様に、「引き分け」や「会」で形に固執すると、力が偏り、左右のバランスが崩れることがあります。八節における形式的な決まりをまず守ろうとすると、一生からだの力みが抜けません。そうではなく

形よりも「流れ」を重視する

ようにしてください。

本来、弓道の射で重要なのは、形の正確さではなく、全身の力が無駄なく流れる「流れのある動き」です。形式的な内容に囚われると、体が力んでかえってその内容ができなくなります。

極論言いますと、「力を抜こう」と意識したとしても、形式的な内容に囚われていると力が抜けなくなります。むしろその意識がが逆効果を生み、筋肉が硬直してしまいます。結果的に、自然な動きが失われ、射の本質が損なわれてしまいます。

弓道の真髄は、形ではなく、心と身体が一体となり、自然な力の流れを作り出すことです。

その結果として形が整い、力が抜けた美しい射が実現します。この考え方に基づけば、「八節」の決まり事はあくまで一つの指標であり、絶対的なものではないのです。

禅的に弓を引くために大切なポイント3つ

では、動きの流れを切らさずに、弓を自然に開いて結果的に綺麗な形を作り上げるにやることを決めていきましょう。

結論から言いますと、弓道を通じて禅的な引き方を実践するために、重要なポイントが3つあります。それは「重心」「肘」「離れ」です。この3つを意識することで、無駄な動きを省き、美しい形と的中が実現します。

1. 重心を下ろす

具体的には、下半身の力みを抜いて、腹部の重みを下に下ろすことです。正しい姿勢を作るためには、重心を真下に下ろすことが欠かせません。

この「下半身の重み」は下に降りているほど良いと考えてください。脚、背中、胸の筋肉などの筋肉を緩めるほど、腹部が下に降りる感覚がより深まります。

具体的には、まず脚を少し広めに踏みましょう。そこから、胸の筋肉を広げて両腕を真横に全力で伸ばしてみてください。こうすると、背中、脇下、腕の付け根、肩の筋肉が伸びます。

その状態で両腕を下ろしてみてください。先ほどの、状態に比べてより腹部の重みが下に降りた感覚が得られると思います。

このように、全身の筋肉を伸ばし、筋肉を緩めることで、自然と重心が安定します。この重心を下ろした感覚を強めるほど、弓を引いている最中も姿勢がぶれにくくなります。

2. 右肘を深く動かす

弓道では左手の押しが重視されることが多いですが、実は右肘の動きが重要です。右肘を深く動かすことで、全身のバランスが取れ、結果的に力みを防ぐことができます。

理由は、弓を引く時に、右側を動かした方が軸がぶれないからです。

試しに次のことを行ってください。「左手から動かす」「右手を動かしながら左手を動かす」の2パターンで大三の形を作ってみましょう。

そうすると、ほとんどの人が左手だけ動かすと、体の軸が左側に動いてしまうのを感じられると思います。これは、既存の弓道で言われる「水流れの大三」です。

弓道では、右肘の位置を少しあげながら、肘を張り上げて、左手を動かして大三を取るのを良しとしています。しかし、この動かし方をすると、高い確率で体の軸が動いてしまいます。そのため、余計な癖がついてしまい、射型が崩れやすくなります。

対して、右肘を引きながら、左手を動かしてみてください。そうすると、体の軸が動かずに大三をとることができます。

なぜなら、弓道において、右肘から動かした方が、自然に両腕が開く流れが生まれるからです。

人の腕は、前にあった腕を真上にあげると、だんだん肘が体に近づきながら、斜め後方に動き、耳のところまで動きます。この流れを消さないように腕を動かすのが、余計な腕力を使わず弓を開くのに重要なポイントです。

そのために、右肘を動かしながら大三を取った方が良いのです。右肘を動かしながら

つまり、大三から積極的に右肘を動かしていくのが正解です。良い形と力が抜けた状態の二つを両立させて弓を引くならば、右肘を打ち起こし以降積極的に動かすように意識してください。

3. 離れを大きく鋭くする

最後に離れを大きく鋭く出す。

年齢や骨格によりますが、右腕をできるだけ大きく開くようにします。これで離れが大きくなります。そして、右手を外側に回して鋭く速く弦から外すようにします。

こも二つをできるだけ無駄な力みと意識なく離すようにします。これで大きく鋭く軽い離れを実現できるようになります。

的中のためには離れが非常に重要です。特に、離れが速く鋭く抜けることは、美しい射型を作るための鍵となります。逆に、離れが鈍いと無駄な力がかかり、的中率が下がるだけでなく、射型も崩れがちです。

以上の重心、右肘、離れの三つを徹底的に磨くようにします。そうすると、

意図もせず、目的も持たず、筋肉と弓矢が自然に働き、自然に体が開かれ、離れる射

が実現します。

これら三つの内容を勉強し続けると、姿勢が綺麗になってきますが、どこを観察すれば、自分の姿勢がよくなっていると言えるのでしょうか?その具体的な部位をご紹介します。


「肩が動かない」ということの重要性

弓道における良い引き方の基準のひとつが、「肩が動かない」ことです。

先ほどお話しした、重心がしっかり降りて、右肘を力みなく動かせば、会まで肩が動くことはありません。そして、離れを軽い意識で大きく離せば、胸が開いて、肩も左右に動きます。

当然、肩が静止すれば、頭の位置も安定し、狙ったところに矢が飛ばせるようになります。さらに人が力んだり迷いがでる大元は肩からきています。無駄なことをかん考えるとき、頭だけではなく、肩も無意識に力みます。

つまり、肩は、姿勢、的中、心の全てに効きます。肩が動かないようになると、引き方が綺麗になり、心も安定し、的中も出ます。

しかし、肩を無理に動かさないように力を入れるのではなく、自然と動かなくなるような重心や肘の使い方を意識することが重要です。

例えば、40kgの弓を引く場合、腕で引こうとすると、体が大きくぶれてしまいます。しかし、重心をしっかり下ろし、腕を使わずに背中を使うように意識し、肘から動かすように意識することで、肩が動かない引き方が可能になります。

実際に、正しい姿勢で弓を引くと、弓がまるで生きているかのようにしなり、矢が自然に飛び出します。この感覚を得ることで、弓道の楽しさや奥深さを実感できるはずです。

このように、自然に肩が動かないように開くための練習方法をご紹介します。


強い弓を引く

これ一択です。

あなたが強い弓を開くほど、重心の位置は下がり、右肘は深く動かせるようになります。そして、離れは強く鋭くなり、心と体が鍛えられます。

強い弓を引くことには、大きな意味があります。理由は、弱い弓の場合、引いている時に無駄な力みが体に残ってしまったとしても、引けてしまうからです。

そうすると、自分の引き方の悪い癖に気づきにくいのです。しかし、30kg以上の弓では、ほんの少しの無駄な力や動きが即座に体の力みに出てきます。そのため、自分の射型や力の使い方を正確に勉強できます。

例えば、15kgの弓であれば多少の力みがあっても引けてしまいますが、30kgの弓では少しの力みでも大きな損失となります。

そのため、30kgの弓を引くためには、より体重を落とそうとしたり、右肘を深く動かそうをしたりしなければいけません。それによって、より深い体重の乗った姿勢、無駄な力みのない引き分け、鋭い離れを作り上げるのに役立ちます。

では、強い弓の場合、何kgから始めればよいのでしょうか?答えは「今持っている弓のkg数➕3-4kg」です。インターネットで検索すると、弓のkg数を指定して注文することができますので、ぜひ自分の弓を持つようにしてみてください。

このように、強い弓を引くことで、自分の引き方を見直し、改善していくことが可能です。


禅的な引き方を学ぶメリット

禅的な弓の引き方を学ぶことで、次のようなメリットがあります:

  • 美しい射型が身につく:流れるような自然な動きが生まれ、見た目にも美しい射型が実現します。
  • 的中率が上がる:無駄な力を使わないため、結果的に安定した的中率を維持できます。
  • 心が整う:弓道の動作を通じて、心の平静を保つことができ、精神的な充実感を得られます。

これらのメリットを得るためには、ただ形を真似るのではなく、禅の考え方をしっかりと取り入れることが重要です。


ここまでの内容をまとめてみます

まとめ

弓道を学ぶ上で重要なのは、形にとらわれすぎず、心と体を整えながら自然な動きを実現することです。

  • 形は目安であり、流れる動きを優先すること。
  • 重心を下げ、右肘を深く動かし、鋭い離れを実践すること。
  • 強い弓を引くことで、自分の射型を見直し、改善すること。

初心者の皆さんも、これらを意識しながら弓道に取り組むことで、美しい射型と的中率の向上を実現できます。弓道の深さを楽しみながら、成長していきましょう!

それでは、次は「足踏み」の内容を取り入れて、最適な足踏みの踏み方を覚えていきましょう。

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