今回は、弓道を学ぶ上で最も重要な基礎動作の一つ、「胴造り」について解説します。初心者の方にとって、この「胴造り」を正しく理解しないと、弓道の動き全体が不安定になってしまいます。
この記事では、 「なぜ胴造りが大切なのか」 を分かりやすくお伝えし、初心者でもすぐに実践できる方法を具体的にご紹介します。
胴造でやるべきこと
胴造りの基本とは?
胴造りとは、簡単に言うと 「体の軸を整え、安定した姿勢を作ること」 です。この動作は、弓を引く際のすべての動作の基礎になります。
弓道教室で「胴造りが大事だ」とよく言われますが、その理由を説明されないまま練習していませんか?ここでは、胴造りの重要性とその具体的なポイントをお伝えします。
なぜ胴造りが重要なのか?
理由は3つあります:
- 弓をスムーズに引けるようになる
胴造りができていないと、体が安定せず、無駄な力が入ってしまいます。その結果、弓を引く動作がぎこちなくなります。 - 心が落ち着く
胴造りが整っていれば、体が安定するため、気持ちも落ち着き、的に集中しやすくなります。
正確に狙える
胴造りが整うことで、視線や体の位置が安定し、的を正確に狙うことができます。
「良い胴造り」の外形の状態
良い胴造りの特徴
- 耳、肩、腰が地面に対して垂直に並んでいる。
- 背筋を無理に伸ばさず、自然なリラックス状態を保つ。
- 重心が足裏全体に均等に乗る。
悪い胴造りの例
- 背中を反りすぎて腰が不自然に反る。
- 猫背の状態で胸が閉じている。
- 足裏の重心が偏り、不安定な姿勢になる。
ただ、ここまでの内容を踏まえて、胴造の内容で本当に正しい内容をお伝えします。
本当に重要なのは「メンタル」の安定
あなたは自然にかつ真っ直ぐ心が整った状態を構築できていますか?胴造りでやらないといけないことはこの心を整えることです。
心とは、あなたが外界の情報、刺激を受けた後の反応の結果です。綺麗な景色を見ると、気持ちが癒されます。何かしら力みたくなったり、不快感ある情報を感じたら気持ちが緊張し、筋肉が縮みます。
胴造とは、まだ弓に何も力も加えていない静止状態です。この状態で外側に対しての情報を正しく受けて、正しい身体の状態を作るのが胴造りの目的です。
何も行っていないので、自然に素直な姿勢になっているのが胴造りです。では、人は何も考えず、素直な心になっていたらどのような心の状態になっているのかをまとめます
・「何々しよう、何々しなければいけない」という意識がない
・視界が広くなる
・心拍と血液が高くなっていない
・胸が自然を高く上がる
・肩が後ろに引かれて、肩甲骨が下に降りる
・頭頂は高く伸びている感覚になる
・呼吸が深くなる
・体重は下腹部に乗ってさらに下に重くのしかかる
このような状態に自然になっているのが「心が整った胴造」です。心が整った静止状態です。
そして、勘違いしないでください。
上記の状態は自然にそうなるものであり、じぶんで意識的に行うのではありません。自分からその状態を作ろうとすると、その胴造りは失敗です。
だから、この状態を自分から作るのではなく、全身の筋肉を伸ばしたり緩めることで自然にそうなるものと考えてください。
では、ここから胴造に関する誤解を解いていきます。
「まっすぐ」の誤解:良い胴造りとは?
弓道の世界では、「胴造りはまっすぐに」とよく言われます。
しかし、この「まっすぐ」という言葉はしばしば誤解されます。実際には、 「ただ背筋を伸ばせば良い」わけではありません。
なぜなら、胴造りでまっすぐに伸ばそうと意識した瞬間に力が入ってしまうからです。
ここで、外形的に良い胴造の見極めかたを解説します。ポイントは「耳、肩、腰が地面に対して自然に垂直である」ことです。
この状態であれば、首と肩の筋肉が自然に伸びて全身がリラックスできます。耳・肩・腰の内、首が前に出れば反り腰か猫背、肩が前に出れば猫背とわかります。
ただ、すでにこのように少し猫背になっている人は、無理に真っ直ぐに正そうとすると、重心が偏り、体に無理が生じます。
例えば、猫背を直そうとして無理に真っ直ぐに姿勢を伸ばすとします。すると、背筋が張りすぎてしまい、体幹部が力みます。この無理な動きは、射型全体を崩す原因となります。
では、どのようにすればよいのか?足踏みで脚を伸ばした瞬間に上半身を真っ直ぐに伸ばした姿勢を作れないといけません。
足踏みをする前に、できるだけ、腕、脚の筋肉を後ろに引きます。すると、お腹と胸の筋肉が開いた姿勢をとれると思います。この状態を維持したまま、足踏み動作で脚を開いてください。
そうすると、足を開いたと同時に真っ直ぐに伸びれた胴造を得られると思います。
実際に行うとわかりますが、背骨が曲がった状態から伸ばそうと思ったのでは遅いのです。伸ばそうとした瞬間に筋肉が力んでしまうからです。
そうではなく、最初から姿勢が伸ばせる状態を足踏みより前に作っておいてください。そうすることで、胴造りで無意識に行ってしまうミスを回避できます。
呼吸と胴造りの関係性
呼吸は弓道において欠かせない要素ですが、多くの人が「呼吸は形として行うもの」と勘違いしています。
しかし、本来の呼吸は 「整うもの」 です。つまり、 呼吸を意識するのではなく、胴造りを整えることで自然と整う べきなのです。
ここで、形の呼吸ではなく、最初から背筋が伸びれている胴造りができた結果、自然な呼吸
呼吸を整えるために大切なポイント
- 胸とお腹を動かさない
胴造りが整うと、胸とお腹が大きく動く呼吸ではなく、自然に深い呼吸ができるようになります。これは、「筋肉がリラックスし、無理なく体が伸びている状態」の証拠です。 - 意識しすぎない
呼吸を「吸う・吐く」と意識しすぎると、体が硬直します。例えば、「打起で吸う」「引き分けで吐く」などの動作に合わせて呼吸を操作しようとすると、筋肉が固まり、動きがぎこちなくなります。 - 動きに呼吸を合わせる
呼吸は「整える」ものであり、「作る」ものではありません。例えば、打起の際に胸が自然に広がり、呼吸がスムーズに整う感覚が得られるようにするのが理想です。