打ち起こしの肘の位置を間違えるとあらゆる弊害に陥る

打ち起こしは次の引き分けを適切に行うために、重要な動作です。打ち起こしで腕や肩に負担なく行うことができれば、次の引き分けで弓を大きく押し開くことができます。会が充実し、鋭い離れの実現に強く働かせることができます。

その中で、打ち起こしの高さが重要になります。打ち起こしの高さによって、次の引き分け動作が負担なく行えるかが大きく関わるからです。

ここでは、打ち起こしの適切な高さを解説していきます。

上げられるだけ高く上げることで打ち起こしが完成する

打ち起こしを上げるとき、高さが小さいとあまり良い方向に進みにくいです。上げるときは、自分の上げられるだけ高く上げるようにします。まず、打ち起こしの最低限必要な高さは頭より少し上くらいです。

なるべくこのくらいまでは、肩も一緒に上がらないように、楽に上げられるようにします。ただ、慣れてきたらどんどん打ち起こしが低くなってしまい、後で悪い影響が出てしまいます。

骨格体格関係なく、肘の高さを額の上部まで来たとき、「肘だけ上方に引き上げる」ようにすると、もっと上げることができます。このように、打ち起こしはどこまでも上げられる気持ちを持ち、なるべく高く上げるようにします。

教本第二巻の有名な射手である高木範士は「打ち起こしはできるだけ高く上げるようにし、体全体が足の裏に向かって一本棒になって、地中へ沈んでいく気持ちが出るようにすることが大切である」と説明しています。

その理由としては、打ち起こしが低いとあらゆる弊害が起こってしまうからです。

まず、打ち起こしが低いと、体と拳との距離が遠くなりすぎてしまいます。すると、結果として、弓と体の距離が遠くなります。これによって、引き分けの初動がとても重く、引きにくく感じます。これによって、引き分け中に姿勢が崩れやすくなり、狙いがずれてしまう可能性があります。

ただ、体と拳の距離が遠いのであれば、打ち起こしで拳を自分の体に近づければ問題は解消されるのでは?と疑問を持ちます。しかし、単純に拳を近くしただけでは、別の悪い影響が出てしまいます。それは、打ち起こしを低くし、拳を体に近づけると、腕の裏側の筋肉の張りが鈍ってしまうことです。

実際に打ち起こしで低く、額から10センチ上方に上げます。この大勢は拳と体が遠くなりすぎます。そこで、拳を体に近づけようとすると、腕の表側の筋肉が少しずつ固くなります。これにより、引き分けで弓を押し開くのに必要な腕の裏側の筋肉が使えなくなります。

その結果、引き分けが小さくなってしまいます。あるいは、腕の力みを取りたいと思い、手首の力を抜いたらどうでしょう?いくら手首の力を抜いても、打ち起こしが低いと、次の大三で悪い影響が出てしまいます。

大三を取るとき、左拳が的方向に進みます。もし、手首が体から遠い場合、左手首は手首を軸に外側にひねる運動しかできなくなります。掌をブラブラさせるような手首が開く運動にどうしてもなってしまいます。

すると、手首や拳に力がこもってしまい、離れで拳がぶれてしまう可能性があります。大三では、左右の腕の裏側の筋肉が少し張られる感覚が必要です。ここで、腕の裏側の筋肉を活用できていれば、引き分けでも、同様に左右の腕の裏側の筋肉を使うことができ、弓を強く押すことができます。

両腕裏側に張りが出る打ち起こしの高さとは

このように、適切な大三を取るためには。打ち起こしの高さが重要になります。少し具体的には、打ち起こしが高くなることで、両肘の位置が高くなります。このとき「最低限肘の高さが地面と45度となる」ことを意識します。

肘の位置が高くなると、肘の内側、外側についている骨(橈骨、尺骨)の場所が高くなります。この部位が高くなると、両肘と体が近くなります。

そして、両腕裏側の筋肉が上方に張られる感覚が生まれます。そして、高く上げると、右腕の前膊(ぜんぱく:肘から手首)の平面が大三で右斜めに向きやすいです。つまり、手の甲が右斜めに向きます。この向きから引き分けを行うと、弦が妻手にからみやすくなり、かつ右腕の裏側の筋肉が働きます。

もし、打ち起こしの拳の高さが頭くらいの高さ(低い)と、大三にはいるとき、右前膊の表面は地面と平行になります。つまり、大三で手の甲が上に向きやすくなります。この状態で引き分けると右肘が体の右後方に回りにくく、縦にしかおりなくなります。すると、引き分けが小さくなったり、手首が曲がりやすくなります。

そのため、離れがゆるんだり送るように拳が動いてしまったりしてしまいます。

打ち起こしが高く上げられない場合はどうするのか

ただ、老体の場合、打ち起こしが高く上げられない場合があります。その場合、高く上げられなくても、「肘だけ」でも高く上げなさいという教えがあります。

教本第二巻の神永範士は前膊はなるべく高くするように打ち起こしするとお話しています。これによって、前膊が少し右斜め後ろに向きます。そこから、大三のとき、弓手を真横に動かしてみましょう。すると、打ち起こしが低くても、大三で右腕裏側の筋肉が張られ、次の引き分けで、弦を後方に回しやすくなります。

高く上げるときに心がけたい弓と矢の向き

さらに、高く上げるときにいくつか注意点があります。それは、弓と矢です。弓に関しては、体と平行に、矢はほぼ水平にしましょう。
 
それぞれの理由をひとつずつ解説していきます。まず、弓が体と平行に心がける理由は、もしも弓が体に対して平行でなければ、大三で手の内が入りにくくなります。

具体的には、弓が照っている(弓の上部が体の方に傾いている)とします。その場合、小指の付け根周りのしょうこんに弓が当たらなくなります。

「しょうこん」とは掌の中には、小指の付け根から、3センチ下の部位を指します。この部位に弓が当たらなくなると、弓を持つとき、手のひらには人差し指と親指の間としょうこん部が接するように持ちます。これによって、弓を押すとき、手首が下や上に曲がりにくくなります。

もしも、人差し指と親指しか弓に接していないと、押し動作で手首が下に)向きやすく(上押しになりやすく)なります。あるいは、しょうこん部ばかりに弓が当たってしまうと、押し動作で手首が上に向きすぎて(べた押しになって)しまいます。つまり、弓と体が打ち起こしで平行になす理由はしょうこん部に弓をつけて、押し動作がしやすくなるからと言えます。

しかし、しょうこん部位に当たらなくなると、大三で弓手を的方向に動かそうとしたとき、弓が手のひらの中にピタリとつかなくなります。その結果、手首が下に向いたり、握ろうと指先の力が強くなってしまったりしてしまいます。すると、次の引き分けで左手首に力がこもりやすくなります。

次に矢の水平関係は打ち起こしでの肘の位置と強く関係します。矢が水平になっていないと、どちらかの肘が大三で伸びきってしまう可能性があります。その結果、左右対称に弓を押し開くことが困難になります。

そのため、弓と矢の位置関係をしっかり理解しておきましょう。まとめとしては、打ち起こしでは「弓と体が平行となるようにする」「矢は体と水平にする」となります。

つまり、弓と体は平行になり、矢は地面と水平になっていると、次の大三の動作が行いやすくなります。具体的には、大三で手の内を入れるときに支障が少なくなります。 このように、打ち起こしを高く上げられるだけ上げることで、次の引き分け動作を行いやすくなります。

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