弓構えの動作は矢を弓に番え、本弭を左膝頭に置きます。ただ、膝頭に弓を置いただけでは、その人の弓構えの形が悪くなってしまう可能性があります。
通常では弓構えは弓の本弭を膝頭に置き、自分の体の真ん中が弓と弦の間になるように取りますが、尾州竹林の弓構えの解説では、その人の骨格によって、弓の本弭の位置を少し修正します。この考え方を理解することで、手首や肘に負担のない弓構えを理解することができます。
ここでは、尾州竹林の弓構えの考え方より、その人に会った弓構えの位置を理解していきます。
尾州竹林の弓構えは形ではなく、中の骨や関節を基準にする
現代弓道では、弓構えの基準は「弓の本弭を左におく」、「自分の顔が弦と弓の間に来るようにする」といった形があります。これにより、見ている人はこの人が弓構えができているかどうか、正しく教えができているかどうか判断しやすいです。
しかし、尾州竹林流はそのように形で弓構えを取りません。自分の体の中にある、関節の納まりや骨の関係から弓構えの適した位置をとります。
具体的には、「左拳」「左足」「両肩」「右肘先」が適切におさまる位置を弓構えの位置とします。
人は身長が高い人や低い人、左手が弱い人、上体が前に退きやすい人やそうでない人といろんな特徴があります。もし、弓を置く位置を統一してしまうと、置いた位置が体の関節のおさまりが悪くなる人が出てきます。
尾州竹林では的、左拳、左足、両肩、右足、右肘先の七箇所が墨糸を打ったように少しも食い違いがないようにするよう説明しています。
それは、弓構えで各関節に食い違いがないように適した弓構えの位置を「弓の本弭の置く位置」で修正します。
例えば、身長が高い人は膝頭よりも上部に、身長の低い人は膝頭より下部に置きます。こうすることで、両肩、両肘の関係が対等になるからです。
もしも、高身長あるいは低身長の人が同じように本弭を膝頭において弓構えをすれば、両肩と両肘の関係は、左の方が右の方よりも高身長の人は低く、低身長の人は高い構えになって上半身の各関節の適切な位置が得られません。
その理由は各人が使用する弓の長さが身長によっていくぶんの長短がありますが、弓の手下(握りから本弭までの部分)の長さは弓の長さの三分の一強で弓による長短の差は僅小であって、身長の差と比例しないからです。
4通り以上の弓の構え方があると理解する
さらに、左手の強弱によって本弭の置き所を変えたりあるいは上体の退きやすい人、掛かりやすい人によって、それぞれ本弭の置き方を調整する方法があります。
これは病癖を矯正するための手段と考えられます。左手が強く働きすぎる人は本弭を膝の後ろの方に置いて、弓構えのときから左手を弱いように構え、左手が弱すぎる人は本弭を膝頭よりも前に置いて弓構えのときから強く構えます。
上体が退きやすい人は本弭よりも下部に置き、上体が的の方に掛かりやすい人は本弭は膝頭よ上部において弓構えをします。このようにすれば打ち起こしが引き分けのときに上体が正直に保たれやすいからです。
そのため、弓構えは組み合わせによっては8種類以上あると理解する必要があります。
そのため、人の骨格、身長によって、弓構えのときの形は若干変わります。そのため、的に向かって弓を構えて、体に無理なく適した骨格を保つために多少修正をかけます。