手首の力を抜くためにも、手の内を入れやすくするためにも、引き分けで横に伸びやすくするためにも、離れでまっすぐリリースを出すためにも、たった一つの筋肉の使い方だけで全部集約されます。
この練習法を紹介しようと思ったきっかけ
個人指導の会員から「どう力を入れればいいんですか」という質問を受けました。「力を抜いてこうやって動かせばいい」と答えたところ、「いや、どうやって力を入れるんですか」と念押しされたんです。
その時に気づきました。まずは力の入れ方を覚えて、そこから脱力していくという順序がいいのだと。
初心者の方は「そもそも弓ってどうやって引いたらいいかわからない」「どういうふうに稽古すればいいかわからない」という状態になりやすいですが、弓を引く時の力の入れ方は一つだけです。これだけやれば大丈夫、という方法が実際に存在します。
形をきれいにするだけでは意味がない
弓道の世界では、射型についてあれこれ指摘する人がいます。何が正解で何が答えなのかわからないまま、「ここがダメだ」「あれはダメだ」という指摘だけが続く。これが典型的な弓道の高段者がよく使う指摘の仕方です。
形をきれいにするだけでは意味がありません。きちんと離れて当てられて、腕が楽になって、強い弓も開けるような状態に持っていくための具体的な手法が必要です。
たった一つの筋肉の使い方:体を上に・肘を後ろに
結論は非常にシンプルです。大三の時の力の入れ方はこれだけで十分です。
- 体を上方に伸ばす
- 右肘を真後ろ方向に引き続ける
「後ろ方向」とは、射場で例えると2番間から3番間に向かって後ろに立っている人の方向です。その方向に肘を押し続けるだけです。
イメージとしては空手の突きから肘を引く動作です。空手でスッと突いた後にこうやって引くじゃないですか。あの力です。体を上に伸ばして肩を開いて、その肘の引きを繰り返してください。
重要なのは方向です。裏的方向でもなく、斜め上方前方向でもなく、立って真後ろに引くような動きで肘を後ろに引いていけばいいだけです。
この一つの動きで実現できること
体を上に伸ばして肘を後ろに引くという動作をするだけで、以下のすべてが自然に実現します。
- 拳が真横に伸び続けられる:体を上に伸ばして肘を後ろに引くと、拳は自然と横に伸ばし続けやすくなります。
- 肘が斜め上方に動き続けられる:イナイナイバァ大三と同じ考え方で、肘が自然と斜め上方に向かう動きになります。
- 肩甲骨が正しく動く:肩甲骨の下が締まって上部が開くような構造になります。
- 離れのリリースが出やすくなる:引き続ける感覚が生まれるので、まっすぐなリリースができます。
- 強い弓も開きやすくなる:腕ではなく肘から動かすことで大きく腕を回すことができます。
初心者の練習の進め方:1〜3年は力を入れてグッと動かす
最初の1〜3年は、力を入れてしまっても構いません。グッと動かすことをとにかく繰り返してください。
そしてこれが面白いところですが、この力の入れ方を覚えた後に力を抜いた状態でやると、拳が自然と回るようにできるようになります。体を上に伸ばして横に伸ばす動作は、別に力を入れて行うのではなく、自然に脱力していればできる動きです。
力の入れ方を覚えてから脱力していく、という順序で練習することで、弓を開く感覚が自然と身につきます。
注意点①:肩を横に開いた状態を作る
この練習法をやる上での注意点が2つあります。
まず、できるだけ肩の位置を閉じずに横に開いた状態を作ることが条件です。肩が開いていないと、体を上に伸ばして肘を動かそうとしても肩がきつくなります。
肩が前に出た状態で体を上に伸ばそうとすると、腕を上に上げて肘を動かす際に肩が非常にきつくなります。肩を横に開いた状態で体を上に伸ばしてやることで、肘を後ろに引きやすくなります。
注意点②:胴体を静止させる
2つ目の注意点は、肩を横に開いて、胴体を一切動かない静止した状態にすることです。
体を上に伸ばして後ろに引くという運動をやると、普通は体が回転してしまいます。体を固定することによって、その回転しようとする力が拳に伝達されます。
物理的に言うと、体が回転する運動(角運動量保存則)が、胴体を固定することで拳を回転させるモーメントの力として伝達されます。つまり体を開く力と肘を後ろに引く力が合わさって、回転する動きとして拳に伝わっていくということです。
難しく考える必要はありません。肩を横に開いて、体をしっかり固定した状態でやってください。この2点を意識するだけで、楽にどんどん弓が開く感覚が出てきます。






