離れをスムーズに出す「懸けホドキ」を理解する

矢束一杯に引き込み、充実した会を得ることがキレイな離れを導く条件です。離れ方をスムーズにするためには「会」でしっかり左右に伸び合うことが大切になります。

そして、次の離れにつながるためにはゆがけの指の位置関係が大切になります。実は弦のひっかかりなく、関節の不正なく離れたときはゆがけとギリ粉のすれる音が違うことがわかっています。ここでは、ゆがけに生じる音から、適切な離れを導くための右拳の位置について解説していきます。

キチキチ、ギリギリとなれば適切な右拳の位置と向きになっている

取り懸けるときに懸帽子と中指(四つ弽は薬指)にギリ粉をつけます。これは、懸帽子と懸帽子を押さえる指との滑りを止めるためです。

引き分けに入り、会に至るときに取り懸けた指とかけ帽子の間で摩擦が起きて音が出ます。このときに、右拳が適切な向きと位置で引き収めてくると「キチキチ」と音が鳴ります。

逆に「ギリギリッ」て音が引いている途中で止まるとそれは伸び合っているのではなくて拳を握っていることを表します。そして、引き分けでなっていた「ギリギリッ」て音が会になると「ギリギリーッギリーッ」と、音と音との間隔が長くなります。

これは、丁度伸び合って、伸び合う力が満たされた状態を差し、日置流ではこの状態を「やごろ」と言います。音の間が長くなって最後音が鳴るからならないかくらいのところまで引いたときが離れの時機であると説明しています。

このキチ~の時間は凡そ四、五秒くらいで、これを三等分して考えるとする。

すると、初めと次の二部分は「引く矢束」で初めは音が五ツで短く近く、次は三ツでやや長く遠く、最後の部分は引かぬ矢束に相当し、音は二つくらいで長く遠くなる。
 
最後のときは、伸びは少なく次第に静かになったときである。離れはこの静かになったときの終わり、すなわち最後のキチ~の直前に離れるのが充実し、両手の平均し、気合いも緊張しているのである。~浦上範士~

音が鳴るときは取り懸けた指と親指との間でしっかり摩擦が起こる

引き分けに入ると、親指は懸け溝に当たった弦に従って、押し出されます。押し出された親指はさらに内側に入り、中指もしくは薬指に当たっていきます。

この時、中指、薬指は第二関節から第三関節の間で親指に当たると中指が全体が曲がった構造を取ります。伸びもせず、握ってもいない中指の指の形が親指外に出ないように、逆方向に力が働きます。そうして、中指と親指との間でこすれ合う摩擦力が働き、「ギリギリ~」と音がします。


もしも、中指が伸びすぎた構造であれば、親指を押し出されると同時に中指も一緒に伸びてしまうため、音は「ギリギリ」ではなく、「ズルズル」と音が鳴ってしまいます。逆に中指が曲がりすぎて、親指を押さえつけるように握った状態では摩擦が起こらず、音が鳴りません。

このようにうまく摩擦が働くと、かかった親指と中指あるいは薬指は引き分けが進むに従って締まっていきます。自分で握らなくても右拳の取り懸け部がしっかり強固になります。

摩擦力で締まっているため、弦がかけ溝から外れた瞬間に摩擦力はゼロになります。ゼロになった瞬間に親指はななめ後方に押し出されます。これが離れの線となります。結果的に右肘はまっすぐではなく、ななめ後ろに離れていきます。
 
キリ~やギリ~の音を激しくさせて「掛けホドキ」ということをなし、離れの時機を作る人がいる。~浦上範士~

同様にで左手は親指の根っこで弓の右側を押します。そして、離れたときに弓にかかる力がゼロとなり、左拳と左肘が的方向に押し出されます。左拳が弓の弓返りの働きが加わって後方に動き、結果的に左腕が開いた形になります。

左右の拳の動く大きさは、初心の間はなるべく大きく開く方がよい。左拳は会の時の位置よりも前方に出ることなく、上がることなく、そのまま後ろ下方口→左肩方向へ動き、

右拳は会の時の位置より前方を通らぬよう、上下せぬよう、左方へ緩まぬよう、そのまま直ちに右後ろ下方の方向へ軽く大きく開くようにする。~高木範士~

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