つのみは自然に効かせるのではなく、自然に効かされる
角見とは、親指の付け根を指し、会から離れにかけて弓を押し込むように動けば、理想的に弓を押せていると言えます。
しかし、実際は親指の付け根を押すのではなく、次のように関節が動きます。
矢を放つ時に、
- 胸が開く
- 上腕三頭筋の付け根が後ろに引かれる
- 前腕が内に捻られる
- 親指付け根が伸びる
という順番になります。つまり、親指は押し込まれますが、実際に親指を操作するのではありません。むしろ、離れた直後には親指は何も感じないくらいに動作が終わっています。
では、どのようにすれば、この角見が自然に働くようになるのでしょうか。詳しく解説していきます。
角見の正体と親指の役割
弓を支えている状態から離れの瞬間に、弓が回転しようとすると、親指の骨がわずかに回ります。これが角見の正体です。親指の付け根が自然にクルッと回るように働きますが、これは身体全体の連動が生み出す結果であり、指先の操作ではありません。
親指の伸びを決める2つの要素
親指がしっかり伸ばされるかどうかは、
- 最初の姿勢
- エネルギーのかけ方
この二つで決まります。
あとはいくつか前提がありますので、それを合わせて解説していきます。
まずは前腕。前腕は2本の骨を自由に旋回できる様に力を抜いておくことが大切です。
腕は上腕骨と前腕の二本の骨で構成されており、自由に回旋運動ができます。初めに、体重を落とし、おなかと胸の筋肉を開くと、前腕の余計な力みが取れます。そうすることで、前腕の骨がスムーズに回旋できるように準備します。
この状態で弓を持ち、弓を押していくと、手首は外に曲がる様に、前腕は外に回る様に力がかかりますよね?これは弓の圧力が手のひらにかかり、それが前腕に伝わるからです。
そして、離れの動作で押し込まれていた弓が的方向に弦によって、引っ張れるます。この時に、外回りに力がかかっていた前腕が弓の方向に伸ばされます。
その時は、前腕の骨が内側に回ります。この時に親指が内側に絞る様に自然に伸ばされます。これが、自然に効かされた角見です。
なぜ「親指を押せ」と言われるのか
一部の高段者や指導者は「親指を強く伸ばせ」「角見を効かせろ」と教えることがあります。
これは、最初の構えとエネルギーの掛け方が違うからです。
もし、教えている高段者が自分から、親指を内側に捻る様な動きをしていたとします。そうすると、会で弓の圧力がかかった時に、手首が外に曲がる様に力がかかりません。つまり、離れた時に親指が自然に伸ばされる力が弱くなります。
そうすると、自分から親指を突っ込む様に力をかける必要があります。そうしないと、親指を最大限に押し切れないからです。
この様に、最初の構えが「前腕の2本の骨が回りにくい」状態でエネルギーをかければ、その人が感じる「親指を押し込む感覚」は変わります。
腕の力を抜いて、自然に腕を回していけば、角見は「押し込むのではなく押し込まれる」ものです。親指を意識的に押す必要はなく、むしろ余計な力を加えるとノイズが発生し、弓の動きが乱れます。
自然な角見を生み出す条件
自然な角見を生み出すために大切なのは、
-
- 胸とお腹を開く
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- 腕を回旋しやすい姿勢を取る
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- 手の内に余計な力を入れない
指先を無理に握る、親指を押し込むといった意識は逆効果であり、動きを固めてしまいます。結果として離れがブレて、矢が素直に飛びません。
まとめ
角見は親指の操作ではなく、身体全体の回旋運動によって自然に生じるものです。最初の姿勢とエネルギーの方向を整え、力みを捨てて自然体で引くことで、つのみは「効かせる」のではなく「効かされる」形で働きます。