9割の人は「目の力み」によって大三の射型が崩されている

9割の人は目の力みで大三が崩れている

弓道の稽古を始めて間もない方に多い悩みとして、「大三動作で肩や腕が力んでしまう」というものがあります。多くの人は、この原因を腕や肩そのものに求めがちですが、実は大三の崩れは『目の力み』から始まっているのです。

・大三動作で腕や肩が力んで困っている人がいます。その時に、「目」に注目されている人はいますか?

・ほとんどの人は目が力んでおり、目の力みによって、肩腕が力んでいる

・具体的な取り外し方と見方に着いて解説していきます。

9割の人は眼球の「内側、下側」に力が入っている

眼球は6つの外眼筋によって動かされます。そのうち左右や上下に動かす4種類が特に重要です。

この中でも「内側直筋」と「下直筋」に無意識に力が入る人が非常に多いです。

・まず、眼球には、4種類の筋肉が着いております。左右上下に動かせる様になるためにそれぞれ筋肉が着いております。

この中で、内と下に向ける筋肉に力が入っております。この筋肉に力が入ってはいけません。なぜなら、内と下に向ける筋肉が力むと、身体の前側の筋肉が縮みやすくなるからです。

バイオメカニクス的に、内側直筋・下直筋は首の前面や胸郭の筋肉群と連動しており、胸をすくめるような姿勢を誘発します。そのため、呼吸が浅くなり、股関節の可動域まで狭くなるといった悪影響が生じます。

さらに広がるデメリット:内側・下側の眼球筋の緊張が及ぼす影響

内側や下方向に眼球を引き込むような筋肉の緊張は、弓道の動作に留まらず、身体全体にさまざまな悪影響を及ぼします。

具体的には、呼吸のしづらさや股関節の可動域の低下といった影響が挙げられます。これに加えて次のような問題も報告されています:

  • 姿勢が崩れやすくなることによる頭部・頸部・肩・背中のコリや痛み
  • 視線と姿勢のバランスが崩れることで、視界の歪みや頭痛・集中力の低下が起こること。

実際、眼の筋肉と姿勢は深く関連しており、「Eyes Down(下を見る)」状態は前屈みや猫背の姿勢を促し、身体の前面の屈曲反射を強めることが知られています。

さらに、「姿勢と眼」は脳幹・頸椎を介して密接に繋がっており、眼の緊張や視線の偏りが神経伝達や血流にも影響して、姿勢の悪化や筋肉痛、疲労感を引き起こすことがあります。

こうした問題は、長時間にわたり視線を内側・下側に固定してしまうことで、無意識に項部(首の後ろ)や肩などに力が入り、全体のバランスと動きの連動性が阻害されるからです。

・そして、ほとんどの人は「的を見ている時」に眼球の内側、下側に力みが入ってしまいます

・弦調べが終わって、物見を向けて、弓をうち起こした時に、的を集中して見てませんか?9割の人は、ここでまとを注目して見すぎてしまい、眼球の内側と下側に力が入っております。

視野が狭くなると肩が力む

・では、どのくらい視界が狭くなっているとダメか詳細を解説していきます。

・あなたが的を見る時に、両隣の的も正面の的と比べて均等に見れていますか?見れていなければ、すでに視野が狭くなっており、肩と腕が力んでおります。この状態で弓を引いても上手くいきません。

・最後の会で腕と肩に力みが入って、最後の離れでまっすぐに抜けている感覚がでなくなります。これは「目」によって無意識に肩と腕が力んでいるからです。

・狙いを合わせる時も問題です。人は眼球の内側、下側に力が入っていると、頭部が前に出てくるから

・実際にアーチェリーの現象でも、あまりに的を注目しすぎると、頭部のずれが起こって狙いに影響するという報告もあります。

海外のアーチェリー研究でも「過度な凝視が頭部の前傾や姿勢のずれを生み、狙いの安定性を損なう」という報告があります(Lee, K. & De Bondt, R. Total Archery, 2009)。

・この様に、下を向くと胸やお腹の筋肉が縮んでしまい、それで弓を引くと肩が上がりやすいのです。

さらに、内と下に向きすぎる最大の問題は「目を瞑ってもその力みが抜けない」ことです。

眼球の筋肉を緩める方法は、「首の付け根を下げて、首の後ろの筋肉」か「首の側面の筋肉」を緩める必要があります。これらを緩めることで、自然に目の力みが取れていきます。

外と上を積極的に見るようにせよ

・では、本来はどこを使わないといけないのか?それが「外と上」です。

・斜め上を見るかのように、視野を広く、少し高くしましょう。そうすると、肩と腕の力みを減らすことができます。

外直筋や上直筋が働くと、僧帽筋の上部や肩甲骨の外旋筋と連動し、胸を大きく開きやすくなります。その結果、弓を左右に大きく開く力が自然に生まれます。

・少し、視野を広くしてください。そうすると、視野を広くすると見え方が変わるだけではなく、肩や腕の力みが抜けませんか?それだけではなく、肩の回しやすさが変わります。

・眼球の外側、上側が力むと、肩が外回ししやすくなります。これにより、弓を開く時に、大きく胸を開いて弓を開きやすくなります。

どのくらい、外と上を見る様にするべきか?

・ここまで解説すると、「実際は、目はどのくらい視野を広げた方が良いのか?」に着いて解説します。

・具体的には、「両手を耳の横につけて、それを両目で見れる」くらいです。

まず、左手を左耳の近くに置いて、その左手を顔を左に向けながら見てみましょう。そこから、顔をもう一度元の位置に戻していきます。この時、「目は左手を見たまま」にしておきましょう。

つまり、顔は正面に戻しながら、眼球は左方向にキープしたままです。このように、完全に左方向に眼球を動かせる状態を確認したら、自分の眼球を元の位置に戻してみてください。

おそらく、何もしなかった時に比べて、左の眼球の視野が外に広がって左耳の横にある左手を感じられると思います。これが「視野が外に広がった状態」です。

同じことを右目でも試してみます。そうすると、左右の目の視野を外に広がった感覚を得られます。

このくらい、左右に見れるようにしてください。このように左右の視界を広げるためには、それだけ首の付け根と肩甲骨を下げなければいけません。

半眼の嘘

・そもそもの話ですが、弓道の世界では「半眼にして的を見よ」「ぼんやり的を見よ」という教えがありますが、この教えは使えません

・なぜなら、目を薄めようとしても、むしろ眼球周りの筋肉が縮むからです。

半眼とは、意識的に目を細めることではありません。首の後ろを緩めた時に自然に生まれるまぶたの柔らかさが、本来の半眼です。

・例として、顎を真上にあげて、天井を見るように上に向けます。天井を見るようにして、数秒伸ばします。そして、頭を下ろしてください。そうすると、瞼の上部が自然と緩み、瞼がおりませんか?

・これが自然な半眼です。自分から薄目で見るように目を細めると逆に両目の間に力が入りますよね?

・半眼は、首の後ろを緩めて眼球を上下に、首の側面を緩めて眼球を左右に動かしやすくしてできるものです。それを自分から緩めるように意識しないで下さい、そうすると、余計に顔に力が入り、弓を開けません。

まとめ

初心者が大三で崩れてしまう原因の多くは、「肩や腕の力み」ではなく「目の力み」です。眼球の内側・下側の緊張を避け、外側・上側を意識することで、自然に胸が開き、腕や肩の力みが取れていきます。

これはまさに、「自然体」や「無為自然」の実践です。目の使い方ひとつで、弓と身体と心が一致していくのです。

今日からできるチェックポイント:

  • 的を見るときに両隣の的も均等に視野に入っているか
  • 首の後ろを緩め、まぶたが自然に下がる半眼になっているか
  • 視界を少し上・外に広げ、胸を開く感覚を感じられているか

こうした習慣を身につければ、あなたの射は格段に安定し、美しくなるでしょう。

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