手の内を行う時に絶対身につけるべき「反発力」の出し方

今回は「手の内の感覚」についての質問があったので、それに回答をします

ご質問の内容は「要するに手の内の時に、弓に応じて、自分の腕が伸びる感覚、そして内に絞られる感覚があるか?」ということです。これについて、詳しく解説していきます。

結論:反発を感じ、小指を使うことが大切

重要なのは、反発を感じて、少し小指を使うことです。

理由はシンプルで、反発を感じなければ、適切に腕の筋肉を内側に絞れないからです。そして、内側に絞る時に大切なのが「小指」を軽く締める。

例えば、スマートフォンを左手においてください。スマートフォンを手のひらにおくと、その重みが左手のひらに伝わりますよね。そして、軽く小指を曲げてみてください。

正直、やることはこのくらい簡単でシンプルなことです。それを弓を持っている時に同じことをやれば良いだけです。

次に「反発力」をどう感じるか、具体的な小指の締め方について解説していきます。

反発力をどう感じるか?

これは弓道教本でも「弓は直動ではなく、反発力で開く」と説明されています。

ここで、まず「弓を反発する」とはどういうことなのかを解説します。

反発力を感じるには、左手、左前腕、左上腕の関節を動かさずに、壁を押して感じるようにしてください。

つまり、「弓を反動で開く」とは、左手首・左前腕・左上腕の位置関係を変えずに押している感覚があるかで判断できます。

壁を押す練習をしてみましょう。完全に腕を伸ばした状態で力を抜くと、腕が少し曲がります。

この状態でもう一度、腕の筋肉を伸ばして壁を押してください。壁を押している感覚が得られると思います。これが、「直動力」です。直動力による押し動作では、強く押せません。別の押し方を覚える必要があります。

そこで、腕を少し曲げた状態で胸を開くようにしてください。すると、左腕の付け根から筋肉が伸びる感覚が得られます。

ダメな押し方は、壁をずっと押していると「左肩が詰まってくる」「左前腕がきつくなる」「強く押そうとしないと強く押せない」といった感覚になります。

逆に、良い押し方は「少ない意識なのにしっかり押せている」感覚です。これは、反発力を持って腕を開いている証拠です。

これが「反発力で押せている感覚」です。壁も強く押し続けられて、かつ自分もそこまで意識せずに弓を押せると思います。

なぜ、この様に楽に弓を押せるのか?少し筋肉の神経の関係から解説していきます。

直動力で押している時は「肩ー上腕ー前腕」の筋肉が連動して、押すことができます。こうなると、壁を押していると、どんどん肩まわりの筋肉がこわばっていき、やがてキツさや不快感が出てきます。

一方、反発力で押している時は、「胸から開く様に」と解説しました。このとき、腕だけではなく、胸筋と広背筋が連動して肩甲骨を支える様に働きます。そして、上腕三頭筋が自然に伸ばされます。

神経的には、腕の末梢神経が「過剰な収縮」ではなく「伸張反射(筋肉が自然に伸びると働く反射)」として反応します。そのため、押していても不快感が少なく、むしろ安定して押し続けられるのです。

脳科学的には、反発による押し方は「力みを抑える運動連鎖」が起こります。人は力を強く入れようとする時、脳からら強く信号を神経を介して筋肉に送り届ける必要があります。反発による押し方の場合、脳からの過剰な信号が少なくすることができます。

実際に、バイオメカニクスの研究でも、壁押し時に直動力を使うと前腕の屈筋群に負荷が集中し疲労が早い一方、反発力を使うと大胸筋・広背筋といった大きな筋肉が分散して働くため、持続的に押しやすいと報告されています(参考:肩甲帯と上肢運動連鎖に関する解剖学的研究, 2018)。

弓によって内側に絞られる感覚が変わる

次に「内に絞られる感覚」について解説します。

内側に絞られると言っても、具体的にどのくらい絞る様に拳をこれは弓の種類によって変わります。例えば、入木が強く下部が強い弓では、小指を締める力が強く必要になります。

その結果、左拳が内に絞られる感覚が強くなります。

一方、入木が弱い弓ではその強さが弱まり、内に絞られる感覚も薄れます。つまり、弓ごとに違う感覚を持つのが自然なのです。

だから、自分から左腕を内側に絞ろうと考えてはいけません。なぜなら、自分から左拳を絞めようとすると、力みになってしまうからです。

ここでいう左腕を内側に絞る感覚は自分から行うのではなく、弓によって絞られる感覚が変わると考えてください。

ただ、その上で、適切に左腕を内側に絞る様に筋肉を使うためにやってほしい指の使い方があります。

具体的な絞り方のアプローチ

ポイントは「親指は絞らず、小指を軽く締める」ことです。

左腕を内側に向ける時に最も意識しやすいのが、親指の筋肉を内側に絞めようとする動きです。しかし、この様にすると前腕にある指を曲げる筋肉が働きすぎてしまいます。

そうすると、腕の筋肉を最大限に伸ばし続けるのが難しくなります。

この様に、親指を意識するのはやめた方が良いです。それよりも、小指を締める様に意識してください。

小指を締めても同様に、左腕を内側に向ける様に動かせます。この場合、左前腕の下部にあたる「尺骨筋」や腕の付け根にある「上腕三頭筋」が働きます。

これらは腕をまっすぐ伸ばす時に自然に使う筋肉であり、反発力と連動して「押し続けられる力」を支えます。離れでは解放感が強くなり、伸びやかな射につながります。

ただし注意すべきは、「腕の筋肉を意識的に締める」のではないことです。あくまで「腕全体を後ろに引き、腕の付け根をゆるめ、小指を軽く締める」ことを意識してください。そうすることで、弓の圧力が腕に伝わったときに自然に筋肉が反応し、反発力として内に絞る感覚が得られます。

まとめ

今回のご質問に対する回答を整理すると、以下のようになります。

  • 結論:重要なのは、反発を感じて、小指を軽く使うこと。
  • 理由:反発がなければ腕を内側に絞れず、力みによる失敗につながる。
  • 構造:小指を使うと尺側の筋肉と上腕三頭筋が働き、自然に押し続けられる。
  • 意識:親指でなく小指。筋肉を締める意識ではなく、全体をゆるめて自然に反応させる。
  • 禅的観点:無為自然・弓身一如を体感することが、最終的に射を安定させる。

ぜひ、壁押し練習や小指の使い方を取り入れて、日々の稽古に活かしてみてください。

無料メールセミナー

ID : yki0721m