今回も打起こしについて解説をしていきます。
千葉範士:拳先だけ上がり、肩根が下がるようにして、体は地を埋めるがごとく、首頭は天に伸びるように心がける。打起こす気持ちとしては、止まるのではなく、どこまでも伸びている気持ちがなければいけない。
宇野範士:(斜面打起こしの場合)左手はは緩やかに押しのばし、右手は上膊に力を持たせ、額の高さまで静かに打ち上げる
浦上範士:打起こしのあげ始めは静かに、中程で早く静かに止めるのであるが、左右の手を橈まさないように三分の一の矢尺を保ち、前方に曲線を描くようにする。
神永範士:肘下と脇腹との角度を広げるように「打起こし」をすれば、膕が伸びて、足裏にそれが響き答え、下半身がいきてくる。肩甲骨を開き、両肩を前に張り、体のしんを伸ばすようにする。
高木範士:弓の末弭は天をつくよう、身体は真っ直ぐの地の中に沈んでいくような気持ちが味わえるように心がけることが大切である。
神永範士:脇の下ですくいあげるように打起こしをする
神永範士の文章をみて、打起こしでやるべきことをまとめていきましょう。シンプルにまとめると
・両腕を内から外に巻き込むようにすくいあげるように打起こしをする
です。
神永範士の文章に、「脇腹と肘の角度を広げるように」と言う記述があります。この文章では「肩の付け根が下がらないように両腕を伸ばし続ける」ことを指しています。
人は腕をあげるとき、自分の体と垂直な角度までは腕だけが動いて、そこから上は肩甲骨周りが働き始めます。
そこで、腕関節に力が入ってしまうと、肩甲骨周りの筋肉もつられて弓が上に上がってしまいました。
それを防止するために、弓の上方の上げ方を学ばないといけません。普通は、腕を上にあげるほど肩がきつくなってきます。
そこで、上腕を外側に回すようにします。すると、肩関節が上がらずに弓を上にあげることができます。
理由は、上腕を外側に回すと脇下の筋肉が張るからです。脇下の筋肉が張ると、腕を上げたとしても肩が上がりにくくなります。
脇下が張ると、肩甲骨が下に引き下げられ、肩が浮き上がるのを防止します。
さらに、両腕がすくい上げられると、肋骨が少し上に引き上げられます。これによって、太ももの付け根が伸ばされます。
これにより、脚の筋肉よりリラックスし、「下半身が地面に体重が乗る感覚」がより感じられるようになります。
これを下半身が活きた状態と解いています。
下半身の体重を乗せる際は、上半身を傾けたり、脚に力を入れてはいけません。それでも、下半身が体重が乗った感覚を得られます。
しかし、打起こしを上げると、高い確率で肩関節が上がります。
肩関節が上がらないように姿勢を構築し、腕を最後までのばし続けなければいけません。
そのためには、腕を外側に回して、救い上げて、少しだけ肋骨が上方に引き上がるようにするようにします。
千葉範士:肋骨が少し引きあがらなければ、腕は伸ばし続けられない
千葉範士の文章を読み返すと「拳先だけ上がり、肩根が下がるようにして」「首頭は天に伸びるように心がける。」など、神永範士の文章と似ている箇所があります。
ただ、注意していただきたいことが「腕はどこまでも伸び続ける」と言う一文。
千葉範士の文章には「体を地面に埋めるがごとく」と記されています。もし、この文章を真に受けて、体を猫背にしたり、脚に力を入れて下半身を地面に沈めるようなことはしないでください。
それを行なってしまうと、高い確率で打起こしで肩関節に力が入ってしまいます。体を地面に沈めるようにと言って、肋骨の下部を下に下げてみてください。打起こしを高くあげるのが難しくなり、加えて肩周りに力が入りやすくなります。
宇野範士:右前腕を張るために、右手上膊を緩める
次に、宇野範士の文章にある「上膊に力を持たせる」と記されています。この文章は斜面打起こしの内容となっていますが、神永範士の知識が使えます。
腕をすくいあげるように弓を打起こすためには、両腕上腕を外側に回す必要があります。
斜面打起こしでは、左腕を押しのばし、右腕上腕が張られます。ここで、腕を外側に回して置くと、必要以上に腕の筋肉が張らないために、右肩が上がったり力むことがありません。
右腕上腕を適度に張るためにも、神永範士の文章を実践しましょう。
浦上栄氏:腕を緩めれば、呼吸を容易に止められる
なお、浦上はんしは呼吸するときに、このときに息を止めて、このときは息を詰めてと解説しています。
いずれにしても、両腕上腕を外側に旋回させておいた方がいいです。そうしないと、呼吸運動がしずらくなるからです。
両腕を外に回すと、胸の筋肉が開いて肺が膨らみやすくなります。脇下の筋肉が縮み、肩が緩み、胸筋も緩むからです。
高木範士:両腕を外に旋回させれば、背中が伸びて、呼吸が整う
なお、高木範士は、文章中で
・打起こしで後ろ下筋、背部の筋、腰の後ろ側の筋肉、脚部が軽く引っ張られる具合になる
・呼吸は平成にして、強く吸引すると呼吸補助筋に凝りが生じて、射の動作の円滑を欠く
と解いています。
この二つの内容、神永範士の文章を実践いただければできます。
腕を外に旋回し、肩を下げることで脇下の筋肉が張ります。これにより、胸が緩み、呼吸を吸う、吐く、止めるが容易にできるようになります。
さらに、脇下の筋肉が緩むことで、背中の中心にある菱形筋と呼ばれる筋肉が緩みます。この筋肉が緩むと、背中の筋肉も連動して緩みます。
背中の筋肉がリラックスして腕が伸ばされることになります。つまり、脇下の筋肉を張る=呼吸も楽=背中の筋肉も伸びると言うスーパーコンボになります。
以上の内容を理解して、神永範士の文章より、全ての先生の内容を実践してみてください。