さぁ、足踏みの内容を教本の文章を元に読んでいきましょう。
やるべきことは三つだけ
・意識的に広く踏む
・太ももを外側に回す
・踵に体重を乗せる
この三つで弓をよく引けるようになり、教本の文章を正しく読めるようになります。
この三つを行うべき理由は、「足踏みを行う意義」を考えるとわかります。
・何のために足踏みをする?
・その意義のためには、何を行うべき?
・それは、他の先生も同様のことを解説されているか?
この三つから考えれば、足踏みで行うべきことがわかります。
足踏みの意義
教本の文章を見ると「足踏みは基礎となるから重要だ」「重要となる第一基底である」と書かれてありますが、
それはわかった。
で、具体的に何がどう大事なのということは記されていません。
どっちなのよ・・・
うーん、はっきりしてって感じですよね。
では、はっきり言いましょうか。
足踏みは
姿勢を安定させ、弓を引きやすくするため
に大切です。
引いている時の姿勢を安定させて、弓を引きやすくするために、
三つだけ意識しましょう。
「広めに踏む」
これだけです。まず、広めに踏みましょう!
足踏み広く踏むとより姿勢が安定する
広く踏むと、腰の重心が地面に近づきます。よって姿勢はブレにくくなります。
弓を引いていて姿勢が
左右の肩の位置がずれる、腰が前後にブレるなどがありますが、
足踏みを広く踏めば、この問題消えます。
例えば、初心者に多いのが「左肩が上がる」問題。
これも足踏みを広く踏めば容易に解決できます。
足踏みを広くふんだら腰だけでなく、肩も下がります。これで左右のぶれも少なくなります。
要するに「上半身がブレる」と嫌ですよね。
その問題、広い足踏みで解決できます。
さらに、広い足踏みは姿勢を安定させるだけではありません。
広い足踏みは弓を引きやすくする
広く踏むと、太ももの内側についている「内転筋」が伸びます。すると、肩甲骨を左右に伸ばされやすくなります。
まず、内転筋の位置を確認しましょう。この筋肉は太ももの内側についています。
ここが伸びると、肩甲骨を左右に伸ばしやすくなる
のが解剖学的にわかっています。
内転筋が伸びると、肩甲骨と背中の間にある「菱形筋(りょうけいきん)」が連動して、伸ばされます。上のイラストでいうところの背骨にくっついている筋肉のことです。
これにより、肩甲骨が外側に開き、両腕を伸ばしやすくなります。
自分の力で弓を開こうとすると、肩に力が入りやすくなりますよね。
でも、広く足踏みをすると、自分で意識せずとも両腕を伸ばしやすくなります。
だから、足踏みを広くした方が有利です。
綺麗な姿勢の構築、的中、射型の安定。初心者。的中率伸ばしたい人には
広い足踏みに慣れると好都合
と覚えておくと良いです。
広い足踏みは続けると慣れて来ます。内腿の柔軟性が向上して、足を開くのが楽になるからです。
足を開くのを止めると、「狭い足踏み」しか踏めなくなります。
すると、上半身がブレやすい姿勢でしか弓を引けなくなります。
しかし、広い足踏みに慣れれば、あとで狭い足踏みしか踏めなくても問題ありません。
高齢で内転筋の衰えが半端ないなら、狭い足踏みで仕方ありません。
そうでなければ、広く足踏みをし、脚を効果的に射の動作に活用した方が良いです。
さらに、
広く足踏みを踏むと、足裏がぴったりつく
ようになります。
重心が下に下がるので、足裏に体重がしっかりのります。
弓を引いている最中に姿勢が崩れてしまう根本原因は上半身のブレですよね。
この上半身のブレを防ぐのは、「上半身をしっかり下半身に乗せる事」が大切です。
そこで、広い足踏みにすれば、体重がしっかり足裏に乗ります。そして、教本で足裏全体に体重を載せるよう解説している先生がたくさんいます。
教本の文章を真似て、しっかり足裏に体重を乗せましょう!広い足踏みで
しかし、
このままでは一つ問題が起こります。
広く足踏みは、前屈み姿勢になりやすいです。
骨盤が前傾気味になりやすいからです。
このままでは、体が前に倒れてしまう可能性があります。この身体が前に倒れやすい問題を解消すべきです。
そのためには、
足踏みの角度を80ー90度位にする
足踏みの角度も広くすれば、広い足踏みでも安定する
と理解しましょう。
太腿を外側に回してみてください。すると、
踵に体重が乗り、太腿が外側に回す
ようになります。
踵側に体重が乗せて、太腿が外側に回します。すると、骨盤が少し起きます。
これが、適切な足踏を作れる根拠になります。先に書いておくと、広い足踏で角度を広くすると、
・身体が前に倒れにくくなる
・背骨が上方に伸ばしやすくなる
・足裏全体に体重が均一に乗るようになる
・太腿の付根が引っ張られる感覚を得られる
・軽く膝関節が曲がるようになる
以上の理由で、安定した足踏を得られます。
まず、太腿を外側に回すと、骨盤が上方に起きます。
骨盤を少し起こすようにすると、前に倒れにくくなります。
そうして、骨盤が上方に持ち上がると、背中の筋肉が伸びます。
さらに、太腿を外側に回して骨盤を起こすと、体重が足首あたり、つまり踵側に多めに乗りますね。
このように、「踵に多め、爪先に少なめ」に体重を乗せると、「足裏全体に体重が均一に乗った状態」になります。
人体を見ると、脛(すね)の骨は、足首の骨(距骨)に乗っております。
その下に位置するのが踵であるため、「踵に多めに体重が乗る」のが、正しい体重の置き方です。
このように、太腿を外側に回すと、お尻の下部の筋肉が締まります。
解剖学的に「お尻の下部」が収縮すると、太ももの付け根が中心に寄るように動きます。
これによって、太腿の付け根が寄って「内腿が張る感覚」になるのです。
これが、正面から見ると、骨盤が上方に起きたことで、「内腿が張る」感覚を得られます。
弓道の足踏みの説明で「太腿の付根を張るように」と言われますが、その内容を指します。
この言葉だけに囚われて、太腿を内側に回してはいけません。
そうすると、内腿に力が入って骨盤が前傾し、背骨が曲がります。
自ら胴造を崩します。
太腿を外側に回す時、膝関節は後ろに引くように動きます。そうすると、膝関節の裏側が少しだけ凹んだ状態になります。
絶対に膝裏側を自分からピンと張らないでください。そうすると、太腿の付け根の筋肉が引っ張られて、骨盤が前にまた倒れてしまいます。
膝の裏側は軽く凹んでいるくらいが適切です。
このように、太腿を外側を回すと。
・身体が前に倒れにくい
・踵に体重が乗り、足裏全体に体重が乗る
・骨盤が起きて、背骨が伸びる
・太腿の付根が張る
・軽く膝関節が曲がる
とわかります。
実際に、弓道教本の図解も足踏みを広くしています。
ようにします。実際に弓道教本の八節の絵、写真を見ると、複数の先生が「足踏みは80−90度位」に踏んでいるのがわかります。
この先生の足踏みの通りに、足踏みの幅を広くしたなら、角度も広くしましょう。
そうすると、
ここまでの内容をまとめます。
ぴったり足を床につけるには?→広めに踏んで体重をしっかり乗せる
広めの足踏みで安定させるには?→足踏の角度を広めにする
角度広くするためにはどうすれば?→太腿を外側に回し、踵に体重を乗せる
なぜ、太腿回すといいか?→骨盤が上方に持ち上がり、背中が伸びる
その確認方法は?→内腿が引っ張られる感覚を得られる
となります。これで、足踏みの目的は完了です。
もし、狭い足踏みで最初に引くと、
・太ももの内側は伸ばされないから、肩甲骨を開けない
・腰の重心はあがるため、上半身がぶれやすい
・足裏に体重がぴったり乗らないため、上半身のぶれが確認し辛い
・脚の踏ん張る力が使えないため、腕と肩が力みやすい
となってしまいます。
全然身体を鍛えられないですね。ですので、
先に足踏みを広く踏むように心がけましょう。
狭い足踏みがなんとなく良いと言われてきた理由
今日の弓道で、足踏みが狭くするように指導されている理由を解説します。
見た目がカッコ悪いと捉えられるからです。
広く足踏みを踏むと、袴の裾が床についてしまい、みっともないと解釈されるのです(これ以外の理由がありましたら、ご教授ください)。この内容は小笠原流の足踏みに由来します。
弓道連盟は「矢渡し」の時のような射法を理想とし、またそれができるように練習することが稽古と捉えます。
ただ、いきなり礼儀正しい引き方をやっても引けません。
弓も大きく引けない、脚の筋肉も使えてない。そんな状態で、「礼儀だけ」「綺麗な射型だけ」行っても、「心と身体の整った姿勢」を構築するのは現実的に難しいです。
むしろ危険なのが、対して身体を鍛えないで、軽い弓だけで形だけ綺麗な引き方を覚えて、弓道を大して勉強しないで、浅い知識で教えたがる先生が増えてしまうことです。
教本の孔子の「礼気謝儀」は、「弓を引けるようになっただけでは足りず、精神の部分でも落ち着きなさい」と説きます。つまり、孔子の教えの前提は、「しっかり弓を引ける身体ができている」ことが前提です。
狭い足踏みだけをやり続けると、姿勢や引き方に問題が出て下手になります。
ただ、広く足踏みを踏んで稽古し続ければ、
・ぶれにくい姿勢で弓を引ける
・両腕を伸ばしやすくなる
・射癖にかかりにくくなる
ようになります。その後に、
狭い足踏みで稽古をする
ようにすれば問題ありません。
最初から狭い足踏みで稽古しても、ほぼうまくなれません。
それどころか、最も足踏みを踏んでそれでも足腰が弱くなった時、さらに狭い足踏みができません。
しかし、広い足踏みを行っておけば、後で狭い足踏みにも対応できます。
むしろ、広い足踏みで脚力を使って引くようにしてから、身体を鍛えてから足踏みを狭くすれば、見栄えの良い狭い足踏みも対応できるようになります。
いったん、広い足踏みからやりましょう。礼儀に即した射で失敗しないためにも
まずは、一足半程度広めに足をふみ、慣れていきましょう。
そうすれば、あなたの肩甲骨は楽にもっと左右に広がりやすくなります。
もっと姿勢はぶれにくくなります。
そうして、射型は綺麗に整います。
そして、この足踏みは、
どのような骨格の人も行うべき
です。
よく、適切な足踏みについても、
「人それぞれ射型や骨格は違うから、適切な足幅は違う。だから、広いから良いと言い訳ではない」と言われる場合もあります。
しかし、この考えも振り返ると「そんな適切な足幅は誰がどうやって決めるのか?」という疑問が出ます。
何センチの人は足幅何センチにすれば良いのでしょうか?その適切な角度、幅の判断方法は?
わかんないですね。
であれば、最初は全身の筋肉を効果的に使える足踏みを行うことが合理的です。
もし、その適切な足踏みが今の足踏みの幅より「広かった」場合、対応ができなくなります。
しかし、広い足踏みが対応できれば、適した足踏みに後から変えやすくなります。
そもそも、足幅を小さくして引き分けて、姿勢が崩れなかったとしても、
足踏みの幅が適切だからなのか、引き分けが小さくて弓の反動が身体にかかっていないからなのかが判断できません。
そうなると、人によって適切な足幅は見つかりません。
であれば、まずは足幅を広くして、しっかり両腕を左右に伸ばしやすく、姿勢がぶれにくい姿勢に慣れることが先です。
その後に、さら楽に引ける幅があれば、それを「適切な足幅」を考えるのが適切です。
少なくとも、いきなりその人にとって適切な足幅を見つけようとする考えよりは、
先に広めの足踏を行っておいた方が、確実に「適切な足幅」を根拠をもって考えることができます。
広い足踏みをすれば、教本の先生の内容は実践できる
では、私の話している内容は特別な内容でしょうか。
そのようなことはなく、教本の先生はみな同じことを推奨されています。
広めに足踏みを踏んでから教本の文章を読んでください。
今まで狭い足踏みでなんとなく稽古をしてきた時より文章の言っている内容が頭に入り、繋がっていくかのように読めてきます。
■広めに足踏みを踏むと、ふんわりぴったりつく
教本二巻の内容を一から見ていきましょう。
千葉範士:大地に体を置く感じが良い。・・・・・部分的に力を入れるのはよくない、足踏みは、床面にピッタリ、ふんわりつくようにするように置く、膝蓋骨も硬くせず、足首関節も硬くせず。(P-61)
「床面にぴったり」「ふんわり乗せる」「膝蓋骨を硬くせず」という内容ですが、
「床面にぴったり」→広く足踏みをして、腰を下げる
ふんわりのせる→踵に体重をのせて、太腿を外側に回す
膝関節が柔らかく保持できる→太ももを外側に開けば、膝関節がピンと伸びにくい
となります。これまでお話さ「広い足幅、角度」で稽古すると、千葉範士の文章を理解できます。
その「脚に無駄な力みなく、体重をおけている」状態を「大地に身体を置く感じ」と例えて解説しています。
柔道の足構えが矢張り部分的に力を入れない構えで(P-63)
柔道の足構えは軽く膝を曲げて腰を下げますよね?弓道でも同様に、広めに足踏みを踏み、膝関節は伸ばしすぎないようにしましょう。
外部の力に応じえる形をとるので少しも隙もない(P-63)
広く足踏みし、太腿を外側に回してください。腰の位置が下がり、身体も前屈みになりにくくなります。
広い足踏みの場合、左右から圧力がかかっても、左右の方向にもぶれません。
次に、角度を広く踏んで踵に乗せます。こうすると、前に倒れることはありません。加えて、後ろから押されても、すぐに爪先に力を込められるため、姿勢がぶれる事はありません。
足指も脚も特に力を入れず、ふんわりとした感じにしておけば、(Pー63)
ふんわりした感じとは、「足裏にふんわり」のせる。と言うことですね。
であれば、広い足踏みにして「ピッタリ」ついて、太腿を外側に回すと、踵に体重が乗って全体に「ふんわり」のりますね。
このように、
広い足踏み、太腿外回り、踵荷重の姿勢で千葉範士の文章の内容は全て実践できることがわかったと思います。
では、これと同様に、「足裏は全体的にふんわりのるように」足踏みすると解説している先生を列挙していきます。
宇野範士:足指を寄せ揃える。「土踏まず」にやや含みを持たせるようにする。中くぼみのゴムが床面に吸い付くようにする(二巻、P-64)
床面に吸い付く=足裏をぴったりつける→広く足踏みを踏む
高木範士:足裏全体が平らに、ふんわりピッタリと大地(床面)に吸い付くようにする(二巻、P-65)
鈴木範士:この足踏みに置いて、特別に爪先や踵に力をいれるのは良い方法ではない(三巻、P-57)。
佐々木:何処か特別のところに力が入り、又は凝ったところがあれば、この足踏みは失敗です。均等にどっしり入ったところがあれば、その方向も巾も良いわけです。(三巻、P-52)
安沢:両足ともに大地に吸い付き、第二の運行に処すべき大事な動作である。(三巻、P-52)
冨田範士:少しの隙間なく総体の力にて大地を踏みつけ、(三巻、P-55)
土踏まずに隙間ない。ふんわりぴったりつける。均等にどっしり入るなど・・・
6人の先生がそれぞれ違った表現を使われていますが、全て「広めの足踏み」を行えば、内容を理解しながら実践できます。
それだけではありません。
広い足踏みには「前屈み」になりやすいと言う欠点がありましたよね。
では、
広めに足踏みし、角度も広くしよう
この内容も複数の先生がお話されています。
宇野範士:一応60度と記されているが、つま先の間隔が狭い場合は六十度が良いようである。足踏みは次第に狭くなる傾向があるが、これは足踏みの本義を忘れて、ただ立ちさえすれば良いと言う考えから生まれてくるものである(P66)
「狭い足踏みは足踏みの本義を忘れる」と書かれています。
ということは、「広い足踏みをすれば、で足踏みの本義を勉強できる」と言えますよね。
じゃあ、まず足踏みの本義を理解するためにも、「広い足踏み」からやりましょう。
宇野範士は全日本弓道連盟の初代会長です。
責任ある仕事を牽引した弓道家が「狭い足踏みは本義を忘れる」と言うなら、その言葉通り、広めの足踏みを実践しましょう。
浦上範士:足踏みは角度は外八文字で十二軒の軍扇を八軒に開いた角度で、およそ八、九十度位になると思う。(P67)
神永範士:つま先は90度位が安定して良いように思う。足踏みが狭いと上が長くて下が短く不安定、両脚の開きはほぼ60度でほぼ60度くらい。正三角形の立った形になる(P68)
この三人は90度に足踏をひらくように解説します。
これ以外に、本多利実、吉田能安、阿波研造、梅路見鸞氏も足踏の角度は広めと解説しています。
ほかに、「半丁字の足踏」というものもあります。
千葉範士:足踏みは外八文字で開くが、左肩が伸びなくなったら半丁字の足踏みにする
半丁字の足踏みとは、左足を広めに踏む足踏みです。これも、左足を広く踏む=足踏みを広くという事です。
松井:普通正道を行くものはすべからく的と直線に体正面と直角に位置すべきである
この文章を実践するためには、「足踏みの角度を広くする」必要があります。
的と直線と体の正面とが、直角で結ばれるようにするためには、直線と体の正面が接するくらい近づけないといけないです。
4人の先生が足踏みの角度は60度以上のものを推奨しております。
教本の先生が記されている通り、「広い角度、広い足幅」で足裏全体に体重を乗せて、稽古しましょう。
さらに、広い足踏みで太腿を外側に回して、
太腿内側が引っ張られる感覚を得る
ようにしましょう。太腿が外側に回ることで、骨盤が上方に持ち上げられ、お尻の下部の筋肉が引き上げられた結果、内腿が伸びます。
このような読み間違いはしてはいけません。次の先生の文章を見れば、「太腿を内側に回す」と解説していないのがよくわかります。
冨田範士:少しの隙間なく総体の力にて大地を踏みつけ、両膝頭を内部へ曲げ込む心持ちに、両脚を引き伸ばして立ち。
この文章は、一瞬「内腿に力を入れたくなる」文章に思いますが、
正解は「太腿を内側ではなく、外側に回す」という意味です。
なぜなら、冨田範士は、この文章の後半に、
冨田範士:上体の重心は左右の足の中心に左爪先と右踵、右爪先と左踵を各々に結ぶ二線に交差点を通る垂直線上にあらしめ
と上体の重心を足裏の中心より「後ろ」にしなさいと解説していますので、そのようにしてください。
これは先に申し上げた「太腿を外側に回す→踵に体重を乗せる」ようにすれば、重心がやや後ろに位置で、かつ太腿付根が張る立ち方ができることを指します。
踵に体重を乗せるのであれば、太腿を内側に回せませんね。太腿を外側に回して内腿が張る感覚を得られます。
浦上範士も、同様の文章を解説しています。
浦上範士:日置流では、左はつま先に乗せて、右は踵に力を入れるようにする。こうすれば、上体が前にでた時は、無意識に左つま先、右踵で支え、前後に同様することはない。両膝全体を内方へ締める心持ちが良い。(P-64)
これも、太腿を外側に回してという意味です。
浦上範士の足踏みでは、左右の足で体重の乗る場所も異なっています。これは、斜面打起こしですので問題ありません。
斜面打起こしの場合、左腕を斜め下に伸ばす時に、左足の爪先側に体重が乗りやすいからです。
ただ、そのように打起こしの仕方が違う浦上範士ですら、右足の体重は後ろに残します。
踵に体重を乗せたまま、太腿内側に回すのは難しいですね。加えて、正面打起こしでは踵に体重を乗せて稽古をする方が適切と言えます。
骨盤が上方に持ち上げられ、背骨が上方が伸びる
そうして、骨盤が上方に伸びると、背骨が真っ直ぐに伸びます。
神永範士:足に力は入れない、うなじを伸ばすと、両肩が落ちて開き、ひかがみを伸ばす、打起こしから会に入るに従い、縦線が一貫してくる、ここでの縦線は「踵から足裏に響き答える」ようになる(二巻、P-64)
最後の文章で「縦線は踵から」と書いてありますね。ですので、
踵に体重を乗せる→足踏みの角度を広くする
→背中が伸びて、首の後ろ(項)が伸びる→両肩が落ちる
このようになります。
ここまでで、教本の内容で「意味の取れている内容」を赤のマーカーで印してみてください。
おそらく、「広い足踏み、広い足幅」を行うだけで、教本二巻の文章の半分以上の内容が筋が通ってかつ実践できるとわかります。
両足を広く踏めば、これ全部できますね。やりましょう。
背骨が上方に伸ばされて、膝の裏側がやや凹む
そして、骨盤が上方に持ち上げられると、膝の裏側がややへこみます。
宇野範士:膝関節は出っ張らないように、引き込むくらいにピンと脚筋を伸ばし、足の外側から踵にかけて、巻くように緊めれば、安定する。(P-64)
この文章、「脚筋はピンと伸びるように」と記されています。
しかし、この記載、間違ってます。
原文(宇野要三郎範士著「基本体型」」)では、「膝裏が凹むようにする」と記載されています。
脚の張り方は膝関節の司る役目であるから、両膝の関節が凹むくらいに裏側を張るのであります。
この原文には「礼に即したる体配の修練」「射品射格の向上」「人間的完成」など、弓道教本一巻の説明、宇野範士の八節の写真、射法の説明が記載されています。
したがって、この文章は虚偽ですので、無視してください。本当の意味は「膝の裏側を凹む」ことです。
足踏みの角度を広くして、骨盤を持ち上げればできます。
こうして見ると、教本の先生のほとんどの内容が、「足踏みの幅と角度を広めに踏む」ことで実践できるとわかります。
ただ、教本全体をみますと、「足踏みは60度が適切」と説明する先生もいます。みていきましょう。
60度の足踏みをより実践的に行う方法
ただ、見た目の均衡が良いといいう理由から、足踏みの角度は60度であることを提唱している人もいます。
高木範士:足踏みの距離と角度、射型上から言っても釣り合った美しさという意味で大切である。左右にふみ開いた幅は、内側で60−70度くらいが良いと思う。ー両足間の距離・間隔は踏み開いた左右の拇指の爪先のところで、自分の半分くらいが良い。
高塚範士:的の一直線上に左爪先を矢束の半分位を60度に踏み、なお的を見込んだまま右爪先を左足の近くまで引きつけながら右爪先を左足の近くまで引きつける。
松井範士:左右に35度ずつ、すなわち70度くらいが適当とする。あまり広すぎると却って安定を失う。
この文章をみたら、釣り合った美しさのためには、60−70度の角度の足踏みを必要のように思いたくなりますが、
将来的に、「見た目綺麗な60度の足踏み」もできるようになりましょう。
そのために、広めの足踏みを行うようにしましょう。
理由は簡単です。
教本の足踏みの説明で60度、70度の角度で説明している文章が少ないからです。
先ほど、二人の先生の話を上げましたが、それ以外の先生の足踏みの説明を見ると、
宇野範士、浦上範士、神永範士・・・80−90度
松井範士・・・60−70度とあるが、「各自の骨格によって変わる」と記載
高木範士・・・60度と記載、後半に「各自の骨格で調整が必要」と記載
千葉範士・・・数字の記載なし。年齢に伴い、矢束に沿って幅を決めよと記載
冨田範士・・・数字の記載なし。しかし、踵に体重を載せよと記されているため、あまり狭くできない。
高塚範士・・・60度と記されているが、「弱弓出会っても足踏みは広め」と解説。そのため、あまり角度狭く足踏みはできない。
この文章のように、60度だけが正しいとお話されている人は少ないです。
60度と解説している先生に共通して言えるのが「人によって角度は多少変わる」と前置きが記されていることです。
むしろ、角度を広めにと解説されている先生の方が割合的に多いです。
だから、足踏みは最初は角度を広めに踏んでください。その後に60−70度に踏みます。
そうすれば、足踏みの角度広めと解説されている4人以上の先生内容と、60度で解説されている先生の内容両方ともできるようになります。
反対はできません。狭い足踏みしかやっていなければ、広い足踏みはできません。きつく感じます。
だから、まず先は、広い足踏みです。そのあとに、見た目が綺麗と言われる足踏を行いましょう。
松井範士はこの文章の最後に
要は各自の体と釣り合いの取れた間隔を採るべきである。
と解説されています。
具体的にどの体格に何度と明記されていませんが、複数の先生が、適切な矢束を見つけよと解説していますが、その具体的な方法は?
私が教本の先生の内容を引用して、お伝えします。「広い足幅、角度で足踏み」で稽古してください。
そして、
適切な矢の長さは自分で判断する
ようにします。
まず、足踏みは「自分の矢の長さに踏むべし」と解説されます。
そして、矢束の定義を解説している先生は、
浦上範士、千葉範士、高塚範士、鈴木伊範士
がいます。
では、この4人の先生の「矢束」の定義で全て踏めるようにしましょう。そこから、あなたにとって「適切な矢束」と幅を選定すれば良いです。
そのためには、まずは先に「幅も角度も広めの足踏み」をします。
まず、浦上範士
浦上範士:ー矢束も多少異なって来る、そこで矢を喉元に当て左手を真っ直ぐに伸ばし、中指の先までに至る長さを矢束の定法とし、それより一寸足す。(二巻、P-67)
この方法で行うと、人によっては身長が高くて腕が長い人も含まれます。ですので、人によっては、90−100センチ程度開きます。
最低の90センチで合っても、180センチの身長の半分です。日本人の平均の身長は男性が167センチですので、これは長いです。
女性であっても、82−90センチ程度の幅があります。82センチでも身長164センチです。足踏みとしては広めになりますね。
この長さに踏むためには、まぁまぁ広めの足踏みに慣れる必要があります。
千葉範士:体格によって差異はない(P-70)
千葉範士:若い背丈の高い者で足踏みが狭ければ、天地の均衡を破ることになるから、常に矢束に習って行うようにすれば良い。・・・・・常に矢束に習って行うようにすれば良い。
千葉範士は、若い人で足踏みが狭いことに関しては否定的なようです。
若い内は脊柱が伸びているので、自然と引ける矢の長さは長くなります。歳を重ねると石柱が縮んで矢の長さは自然と短くなります。
高齢になってからも対応できるようにするために、今から広い足踏みを先に行うようにしましょう。
矢束の説明については、高塚範士が詳しく解説されています。
矢束
高塚:昔から二、三の例がある。教歌に
矢束とは己が肩巾身んの半ば 咽頭を筈あて弓手延ばして
とあるが、これが昔から唱えている三つの例で、一般の基準になるように思う
一、己が肩巾
二、己が身長の半分
三、咽頭に筈を当て弓手を延ばした長さ
四、両腕を大の字に開き、静かに中指の先を胸の上で合わせた両肘間の寸法
五、手の掌を開き、小指の先の辺で四寸の寸法二寸二分(6.6センチ)程になる
といろいろあり、高塚範士は、その後の文章で「三」の内容で解説します。
ただ、どの矢束の定義であろうが、
「広めに足踏みを行うこと」
が大切です。
なぜなら、高塚範士は最後の文章で
ここで、一考したいことは、昨今弱弓(1.8 cm以下)を多く使用するようになってから、足踏みが狭くなったことであるが、然し私は弱弓でも足踏みは矢束により広いことを強調する。(P61)
と、様々な矢束を定義された後に、広い足踏みを推奨されています。
結局広い足踏みが最強です。有名な先生の内容の通り、広い足踏みから実践しましょう。
ほかに、鈴木伊範士は
鈴木伊:その人の両手を広げて中指の尖端にて計った半分が妥当のように思われる。
とありますが、これも、広い足踏みをしてから、実践して行けば良いです。
三重十文字も広めの足幅、角度で身につく
適切な足踏みを決める基準として、「三重十文字」を重要視する先生もいます。
宇野範士:丁字に近い形、すなわち左足の角度が広すぎるような場合は、左脚が突っ張り前がかりのようになって「胴造り」が崩れる。これはあて弓一方に偏することになる。三重の十文字と言うことが大切である。(P70)
三重十文字とは、肩、腰骨、足首の骨が脇正面からみて垂直に交わるようにすることです。これを満たせば、適切な足踏みと言えると判断できます。
これをするために、「太腿を外側に回す、踵に体重を乗せる」ようにしましょう。
なぜなら、太腿を外側に回し、踵に体重を乗せると、「足首」「腰骨」「肩の骨」が横からみて一直線に揃うからです。
これが、三重十文字です。
そのほかに、鈴木範士、冨田範士も同様に、「胴体」が崩れないように指摘されていますが、
鈴木:足踏みでは、的と一直線になるように左右の足を踏み開き、的を見たまま左足にて一歩前に踏むように向き。足踏みは半丁字が良いとして私はやっている。ただ、胴体左斜め・・
冨田範士:万一右足が前後に踏み違うときは、的と両足爪先が一直線にならず、従って胴、腰、両肩が歪曲し、会に至って矢が前後に「ひずみ」が生じる。
この内容は両方とも「三重十文字を崩れないようにしましょう」と解説しています。
ですので、この文章も同様に、「広い足幅、広い角度、踵に体重」の足踏みが大切です。
また、冨田範士はこの文章の続きで、
冨田範士:次に両足の力が前後に片寄るときは、上体の重心また前後に片寄り、上体も前後に屈して安定を欠くことになる(三巻、P-63)
とも解いています。
これを防止するために、冨田範士自身が8ページ手前(教本三巻P-55)で「足裏の中央よりやや後ろ目」に体重を乗せるようにしましょう。
背中が上方に伸ばしやすくなって、身体が体重が前後にぶれることはありません。
その、後ろに体重を乗せるために、「広めの角度、幅で足踏み」を意識するようにしましょう。
浦上範士の「権足の中準」は、足踏みを変えても狙いが変わらない
ただ、足踏みの説明の中には、その先生の独自の情報すぎて、実践に落とし込むのが難しい内容があります。
こう言った内容は、実践できなければ頭に入ってきません。しかし、広めの足踏みを行っておけば、ほぼ全ての内容を理解できます。
浦上:何時もと同じ引いても、矢が前ばかりに出たり、後にばかり外れたりすることがある。斯様な時は左足を動かさず、右足を動かして修正するのである。矢が前方に着いたなら、その日1日は前方に着くものと思い、右足を少し前に踏み、矢が後ろに着いた場合は右足を少し後ろに踏む。これを権足の中準と言う(二巻、P70ー71)
この浦上範士の説明自体が適切なものかわからないです。
なぜなら、足踏みのずれで矢と飛び方が変わる理由を浦上範士と間反対の内容で解説している先生がいるからです。
例えば、弓道で正面打起こしを広めた本多利実氏は、自身の文献「弓術講義録」では、
「蜘蛛の規矩」・・・・・「右足を前に踏むと矢が前にとび、後ろに踏むと後ろに外れやすくなる」(本多流弓術書「弓術講義録」P101−102)
と書いています。つまり、浦上範士の内容と反対の内容になっています。
つまり、浦上範士はこの考え方で的中が出たのかもしれません。しかし、それは一個人の先生が的中したのであって、全ての人に当てはまるわけではありません。
では、この文章はどのように考えれば良いのでしょうか?
個人的には、浦上範士は日置流を学ばれているので、日置流の開祖の文章から、最も近い内容から考えていくのが適切と考えます。
であれば、日置弾正政次の弟子である竹林坊如成の書から考えます。
すると、その弓術の考えに基づくと、
・左右のブレは、足踏み広くふみ、両肩が前後に動きにくい構えを構築する
・下に飛んだ場合は足踏みを広くする
・上に飛んだ場合は、矢を重くする
が正解になります。
こうすれば、行うことはただ一つ「とにかく矢の長さいっぱい引く」ことだけになります。
日置流の弓道の理念には「飛・貫・中(遠くに飛ばし、威力を引き出し、的中する)」と言う言葉があります。
この考えは、弾正政次に基づいたものであり、この理念に基づくのであれば、上に飛んだ時に、足踏みは狭くして、矢の勢いを減らす必要はありません。
「よく飛ぶようになったから矢の重さを変えよう」と考えるのが普通です。
ただ、現浦上範士の日置、印西の日置の考えでは、これは違うと言われてしまうかもしれません。
印西派の日置の稲垣先生は、浦上先生に斜面の考え方を教わり、「矢束いっぱいに引き続けることをせず、左右の腕を雑巾絞りのように動かす」という同じ内容を取り入れているからです。
そうすることで、引き尺を自ら設定し、そこから、上下に飛んだ時に足踏みを変えるかもしれません。
流派や考え方が違うのであれば、流派の解釈は異なります。が、違う流派の内容を取り入れるさいも、足踏みの角度と幅を広くした方が、取り入れやすくなります。
高木範士の足踏の良否で「適切な足踏みの角度、幅」は決まってしまう
次に、高木範士の文章を見ると、「適切な足幅、角度」はほとんど決まってしまうとわかります。
高木範士:足踏みの角度や間隔は規矩に適った形を取らねば、射に色々悪い影響が現れてくる。角度が狭すぎると、体は前後に安定度が高くなるが、左右の安定度が低くなる。角度が広すぎると、左右は高くなり、前後が低下する。
両爪先の間隔の距離が大きすぎると、腰からしたの筋骨が働きすぎ、特に下肢の内側の筋肉が緊張しすぎて、体の左右の安定度は高くなるが、前後に脆くなる。下半部が硬くなり、
反対に距離が近すぎると、下半身の筋骨は楽になるが、上半身も締まりがなくなりがちで、懸かる身、退く身、曲がりや捻れなどが起こりやすくなる。(二巻、P72)
この文章をそのまま捉えると、「ちょうどいい足踏みの幅を探そう」と言っているように思いたくなります。
では、そのちょうど良い幅を探す方法はわかりませんよね?
この文章は、「ちょうどいい足踏みの落とし所を探そう」と言う意味ではありません。
解剖学を用いて、両脚の幅と角度によって、変化する姿勢の安定度を事実として述べているだけです。
だから、シンプルにこの知識を用いて、「より安定した姿勢」を考えればいいだけです。
そうすると、結論「広い足幅と足の角度が適切」と分かってしまうのです。
この知識を使って、適切な足踏みを紐解いていきましょう。
まず、「足踏みの角度は狭すぎると、身体は前後に動きやすくなる」と解いています。
だから、角度は広く踏んだ方が良いですね。
足踏みの角度は「広くすると、左右の安定度が向上する」と解いているからです。
でも、そうすると「身体が前後に動きやすくなる」と思いたくなります。
しかし、ちょっとまってください。そもそも、弓を引く動作で「身体が前に倒れる」ことってあり得ますか?
足踏みを広くすると、横方向に力がかけやすくなるため、弓を大きく開きやすくなります。そうすると、身体は前ではなく、後ろに倒れやすくなることがわかります。
なぜなら、「弓を開く動作」は腕を後ろに引きつける動作であるからです。角度広く足踏みをして、弓を引く動作をしたなら、姿勢は前に倒れることはほとんどありません。
では、「後ろ」はどうするか?その通りで、広い足踏みは身体が後ろに倒れやすくなるために、最初から「踵に体重」を乗せるようにしましょう。そうすれば、身体は後ろに倒れることはありません。
(この理由は次の胴造の項で詳しく説明します)
「両足の角度広く、踵に体重を乗せた足踏み」を行うためには、足踏みは「広い方」が良いですね。狭い足踏みを行ってしまうと、両膝関節が曲がってしまい、足踏み自体の安定性が消えるからです。
しかし、「足踏みを広くすると、内腿に力が入りやすくなる」ことがわかっています。その通りですので、太腿を外側に回しましょう。足踏みの角度を広くしているので、太腿を外側に回しやすくなります。
高木範士のこれらの知識を取り入れれば、「広い足幅、広い角度、踵荷重、太腿外側に回す」姿勢にすれば、適切とわかりますね。
範士の先生の知識を組み、4つのデメリットを全てクリアした足踏みになります。
これを文章をそのまま間に受けて「広すぎず、狭すぎずの足踏み」を行ったら、「前後左右に姿勢がちょっとずつ安定し、脚の力が出ない足踏み」になります。
この足踏みが最も姿勢の安定性が結果的に悪い足踏みになります。
ですので、「60度の、広すぎない足踏み」は、「広い足幅、角度の足踏み」に慣れてから行うようにしましょう。
体格が違っていても、広い足幅、角度の足踏みが大切になる
ほかに、松井範士の文章です。
松井:身長の高いものや肩巾があるものが狭すぎたり、或いはこれと反対に背の低いものや、細く痩せているものが広すぎたりすることは、射にも影響し、殊に射品を阻害する。(三巻、P62-63)
身長の高い人はこの文章に則って広めに足踏みを踏むようにしましょう。
身長のひくい人は「射品を阻害する」と言われてしまう可能性があります。
そのため、見た目がよくない構えから入って、身体をある程度鍛えてから、「見栄えの良い」狭い足踏をしましょう。
いくら、足踏みを狭くして踏み開いた格好だけ綺麗に見えても、全身の筋肉を活用できなくなってしまったら、もっと射品を阻害した悪い射型になります。
それだと、お互いに迷惑ですよね。
この文章の目的は「狭い足踏み」ではなく、「射品が伝わる射」をするのが目的です。そのために、まずは広い足踏みで踏むようにしましょう。
ほかに、
松井範士:背の高いもので、足踏みが狭い場合は、矢乗りが下がり過ぎ、背の低いものが広く踏む場合は、矢先が上がり気味となり、従って手の内や駆け口及び両肩に狂いが生じひいては離れにまで影響を及ぼす結果となる。(三巻、P62-63)
身長が高い人は広い足踏みを踏みましょう。
次に、狭い足踏みの人は、矢先があがってしまい、懸け口、手の内、両肩に狂いが出てしまうと解説されています。
であれば、矢の重量を重くしましょう。足踏みを変える必要はありません。
この文章は、身長低い人が矢が上に飛んでしまったのは、単純に「飛びすぎている」か「うまくなって、離れが鋭くなりすぎた」のどちらかです。遠慮せずに矢を重くして、稽古しましょう。
ここで狭い足踏みにすると、結局また矢が飛ばなくなってしまいます。そうすると、カーボンシャフトにしたり、矢先軽くしたり、矢を軽くしないと飛ばせない「射」の完成です。
射品の整った姿勢が「カーボンシャフトのすごく軽い矢」じゃないと実現できないのであれば、その方が、格好悪くありませんか?
便利な道具を使わないと矢が飛ばないのであれば、それはシンプルにあなたの弓道に取り組みに対する甘さが出ています。
それに無自覚になっていたら、口だけの偉ぶっている高段者と言われざるを得ません。
この文章の目的は、射型が狂いが出ているから飛びすぎているのではなく、矢が軽すぎて上に飛んでしまっているのが原因です。飛びすぎた場合は射型ではなく、道具を変えましょう。
そこで、射型変えると、余計に適切な引き方が分からなくなり、的中しなくなりますので。
最後に祝部範士の文章を見ていきましょう。
祝部:寄りつ射位が指定してある場合、その線より一足前(約二十センチ)に的を左にし足を揃え立ち、矢を番えた弓を両手に捧げたまま、頭を左にして的を見込み、気合いを抜かずに、的から射位まで目筋(めすじ)を引く。これを術語で目縄(めなわ)を引くといっている。
射位が指定してある場合は、これは全くの無用の操作だが、目縄を美しく引くということは、目遣いの心得でもあるし、殊にこの所作は実生活の上に実に役立つ教えでもあり、軽視されぬものと思う。
目縄を引く重要性を解説されています。しかし、現代の弓道では的があるため、目縄を引く必要はないように思います。
そうではありません。
目線は、自分の姿勢がまっすぐ伸び、両肩の線が並行に揃っていれば、自ら定めた目線は客観的に「真っ直ぐ」になります。
足を踏む前に、身体の軸がずれていたり、両肩の線がずれていたりすると、目線が真っ直ぐにむいていたとしても、それは真っ直ぐ立ったことにはなりません。
自分の目で見て真っ直ぐに踏んでいると思いこんでも、身体の軸はずれたままです。
背中が少し曲がった状態で足先だけ合わせて足踏みをしても、真っ直ぐに立てていてもあなたの「姿勢」は整っていません。本当に真っ直ぐに立てているかは足を踏む前に「目縄」を引く癖をつけてわかるようになります。
今日の弓道場のように、的の中心線に対する印があるのには弊害があります。
それは足先を合わせたとしても、自分の両肩の線や身体の軸がぶれていれば、目線はずれるからです。
このような欠点を減らすため、両足先を自分で目で見て決めるのではなく、自分の姿勢を真っ直ぐに伸ばした結果、両足先が的の中心に揃うように意識しましょう。
そのためには、広い足踏みで稽古することが大切です。一番姿勢が伸びている時が、一番両脚を左右に開けるからです。
このように、足踏みの内容を
「広い幅、角度でふむ」ということを実践すれば、ほぼ全ての足踏みの内容を実践できることがわかったでしょう。
次の内容「胴造」についても、適切な動作を行って全ての教本の内容を実践できるようにしましょう。
難しくありません。射法は全ての骨格、体格、経験値の人にも共通する「姿勢の取り方、身体の使い方」が存在します。
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