今回は、猿腕に対して効果的に弓を推せる方法について解説していきます。
弓道の世界では、「猿腕」と呼ばれる腕があります。腕の前腕が上腕に対して真っ直ぐついていない人です。会のときに、弓を押す腕の形が真っ直ぐになりません。
このような場合の適切な押し方を解説します。
猿腕は別に悪くない
まず、猿腕自体は何も悪いこtはありません。猿腕になると、
・弓が押しにくい
・普通に押そうとすると、肩に力が入る
・猿腕は引き方を変えないといけない
などと言われることがあります。でも、猿腕でも楽に弓を強く押す方法はあります。
まず、猿腕の特徴は正確には説明できません。人の肩関節のつきかたは複数あるからです。
しかし、今まで猿腕の方10人以上会ってきて、「猿腕は肩関節のつき方が、左側だけ後ろ、後ろ下についていることが多い」と推察しています。
まず、人間の肩関節のつき方は、胴体に対して、「前」「真ん中」「後ろ」の三通りあり、次に、「少し下気味」「真ん中」「少し上気味」と分かれます。
大部分の人が、肩関節は胴体に対して真ん中についていると思い込んでいます。しかし、実際には、異なり、人の肩関節は左右対称についている方は以外に少ないというのも調査で出ています。
実際、若い女性の身体の左右差を調べた調査もあり、250人超の女性の身体の左右差を調べたところ、
・左肩の方が高くなっている人の方が多く、左右差がない人はほとんどいない
・下半身に関しては、右が高くなっている人の方が多い
と調査で出ています。(参考文献:若い女性における体型の左右差について – 名古屋女子大学リポジトリより)
人間の身体は左右非対称にできています。もっとも重い肝臓が右に位置しており、腎臓の右側だけ下に落ちていたりします。つまり、肩のつき方が真ん中になっていなくても別におかしくありません。
そこで、猿腕の方の場合、左肩が後ろ、もしくは後ろ下についている可能性があります。
この状態で左肩を正常な高さに持ち上げようとすると、左肩を無理やり上方に上げなければいけません。そのため、左腕前腕だけが異常に高くなってしまいます。
あるいは、肘の皿がどうしても、縦に向かないなどの問題が起こります。
しかし、これらの問題が起こること自体何も問題ありません。猿腕には猿腕の楽に押せる方法があります。普通とは違うやり方が、、100年前の文献にね。
少し、弓を照らせ
その文献とは、「射學正宗」です。その文献には、
猿腕の方→少し弓を照らすようにする
と解説されています。全然どうでもいいのですが、左手首が内側に向いている方は、
左手首が元々内側についている方→弓を伏せ気味にする
と記されています。このようにしましょう。
猿腕の人が、全弓連でよく言われる。
・上押しをかける(人差し指と親指の間を平行に揃える)
・左腕を内旋させる
などのことをやってしまったらダメです。余計に弓を押せなくなるどころか、左肩に強い負担がかかります。
上押しをかけようとすると、左肘の上部が強く緊張します。最後まで弓が押し切れず、弦が左腕に当たる可能性が上がります。
次に、左腕を内旋させると、左肩が上に浮き上がりすぎてしまいます。これでも強く押せません。つまり、猿腕の方は、全弓連のやり方でやろうとすると、できません。
そこで、射學正宗のように、「少し弓を照らす」ようにすると、楽に弓を押せるようになります。
いろんな理由があります。左肘に負担がかからない、左肩が上がらないようになるのに加えて、弦の通る面が左腕に対して、平行に揃います。
猿腕の方の場合、左肘の皿は「縦」ではなく、「下」に向いています。そのため、前腕の面がやや上に向いています。
この状態で、弓を垂直に向けると、左腕と弦とが近くなりすぎてしまい、当たる確率が上がります。しかし、少し弓を照らすと、この問題がなくなります。
つまり、腕の面と弦の面が平行になるため、左拳や左肩を押す角度や方向が整い押しやすくなります。
こんな方法が、100年前にもう開発されていたとは・・・射學正宗半端ないって
猿腕は後で治る可能性も十分にある
しかし、ここまで猿腕の話を聞いてきて、
「とはいえ、この腕の状態のママで弓を引いているのもちょっと微妙」
と思う人もいるかもしれません。しかし、ご安心ください。
猿腕は、努力次第で後で直すことは十分に可能です。
先ほど、「腕を内側に回すと、左肩が上に上がってしまう」とお話しましたが、何回もやって左肩を下げて腕を回せるようになる場合もあります。
実際に、私の弓道の仲間の中に、二人ほど、左腕を内側に曲げて、猿腕の骨格が正された方もいます。
猿腕は、上腕の関節が人より柔軟であることが特徴です。つまり、後の努力や使い方で、骨格が正される場合もあります。もちろん、全ての人ではありませんが、
見た目がきになるという人の場合、左腕を内側に回して、押す形を作るようにしましょう。結果的に、普通の骨格の人と押す形が同じになってきます。
猿腕も十分に直ります。そして、猿腕は何も悪くないと理解して、弓を押すようにしてください。
決して、弓を押すときに、普通骨格の人に合わせようとして、「上押しをかける」「左腕内側を内旋させる」ということを無理やりしないでください。
少し、弓を伏せれば、全ては解決するんだから