鋭い離れ、負担のない引き分けにつなげる弓構え構築法

「弓構え」は矢を番えた後、弓の本弭を左膝頭につけたまま、3つの動作を行います。

取り懸け(弽の親指を弦にかける)

手の内(弓手で弓を持つ)

物見(顔を的の方向に向ける)

この三つの内容に分けて解説していきます。注意点がいくつかありますので、ご確認しましょう。

弓構えを行う目的

弓構えの際、「取りかけ」「手の内」「物見」動作を行うようにします。その後にこれまでやった動作の確認をします。例えば、足踏み、胴造などで気をつけたことが複数あったと思います。

・両足の重心が前後に偏りがないか

・上半身に無駄な力みが入っていないか

・背筋が伸びているか

・三重十文字に置ける肩の線が揃っているか

・呼吸が楽に吐けるか

・左右の腕に力が入っていないか など

こういうことを確認ください。ちなみに、弓構え動作が完了した時は

・的の状態、距離、形状を確認する

ことを行います。昔は的の大きさや距離は様々な条件がありましたから。そのため「弦調べ」という動作を行なっていました。しかし、今日の弓道の稽古では、的の大きさ、距離、形状は決まっていますので、一応形式的に行われています。

では、次に物見、取り懸け、手の内のやることをまとめていきます。

取り懸けポイント

次に、取りかけにおけるポイントをまとめます。

・四つがけの場合は薬指で親指で、三つがけの場合は中指で親指を押さえます。中指と人差し指は添えるようにします。この手の形でがけの懸け溝に弦を引っ掛けます。

・かけの親指の帽子が矢と当たらないように少し離して取り懸ける。このとき、親指の帽子が弦と直角になるようにする(これを懸け口十文字という)。四つがけの場合は少し下向きにして取り懸けます。

・かけを弦に懸けたら、そのまま矢筈のところまですり上げます。はずが人差し指の不根に当たるようにします。このときに、過度にひねりすぎると、肘が必要以上に浮き、脇が空きます。そのため、極力ひねらないようにします。

(注意)三がけの場合であれば、かけによってはひねっても差しさわりのないものもあります。ただ、大部分のかけはひねると離れ動作が行いずらくなるため、たとえひねったとして、ほんの少しだけひねるようにしましょう。

・このとき、手首、指先に力が入らないようにします。

注意、手首のひねりは、行ったとしてもほんの少しにしましょう。

手の内のポイント

・中指、薬指、小指(三指)を軽くそろえて軽く握ります。指先に力を入れないようにします。

・弓の左側木のところに人差し指と親指の股(虎口)にはまりこむようにします。このとき、弓と虎口の間は少しだけ開けるようにします。

・天文筋のところに弓の外側の角を当てます。この時、天文筋全部に弓を当てるようにしないこと。弓を伏せるようにして、しょうこんに弓が当たるようにします。

手の内には「指のそろえ方」が複数あります。以下に代表的な指のそろえ方を解説していきます。

三指をそろえる手の内

現代弓道で最もよく使われ、指導者も初心者に教えるときに、最初に教えられるのがこの手の内です。やり方は天文筋に弓左側木に当て、三指(小指、薬指、中指)の爪先を揃える手の内です。

この手の内の目的は、特徴は三指を揃えるため、弓の拳の間に少し空間ができます。これにより、初心者でも比較的早い段階で「弓返り」を起こすことができます。

ただ、この手の内は指先に力が入って、弓矢の操作がしずらいデメリットを持っています。無駄にガチガチに力が入ってしまうのは、この手の内をやってガチガチに握ってしまっている可能性があるかもです。最初の段階では指先を揃えることを気にせず、大きく弓を引くことに慣れていった方が良いです。ある程度操作に慣れてきたら気にするようにします。

日置流の手の内「小指と親指を寄せる」

特徴は「小指と親指の間をなるべく寄せる」ように握ることです。

この手の内の特徴は小指と親指を寄せることで、拳全体が丸くなって弓と手との接触面積が小さくなることです。弓と手が当たっている面が小指の付け根と親指の根元だけで、他の部位はほとんど当たりません

そのため、弓返りが勢いよく、冴えた弓返りができます。弓と手の接触面積が減ることで、弓がかえるときの余計な手との摩擦が少なくなるからです。

ただ、この手の内のデメリットは、正面打起しで行おうとすると、「手のひらのタコやまめができやすい」事です。

この手の内は、斜面打起しであれば問題ないのですが、正面打起しで行おうとすると弓が手の接触面と擦られる力が大きくなります。大三入る時に、「ギリギリー」っと握る音が鳴っている場合、弓と手が擦られすぎているかも。それは、この手の内のように、小指と親指を寄せて、弓を手の中に動かすための隙間が足りなのが原因です。

その場合は、弓を手の中で回しやすくするように、少しだけ間を開けてください。

本多流手の内「中指と親指で一つの輪っかを作る」

他に本多流の手の内で、中指と親指で一つの輪っかを作るように指を整える手の内です。三指の爪揃えをあまり気にせず、中指と親指で輪っかを作るようにします。

この手の内の特徴は中押しを意識しやすいことです。中指は腕、手首を真っすぐ伸ばすとちょうど腕の真ん中を通っています。腕の真ん中で押すイメージで押すと自然と弓にかかる圧力が上下に片寄らず、中押しの形になります。そこで、中指から押して行くようにすると、中押しをしやすくなります。

この手の内のデメリットは、人によっては、手首が上に浮き上がってしまい、人差し指と親指の間にかかる弓の圧力が強くなってしまう事です。ただ、あえて言えばそのくらいの事です。だいたいの人がこの手の内から先に行うことが良いと思われます。

というのも、弓の達人中の達人、弓と禅の登場人物にも出てくる「阿波研造」は、弓を握る時に行うことは二つと解説しており、それが、

中指と親指とが離れないようにすること

人差し指と親指の間に弓がしっかりはまるようにすること

といっているのです。小指を寄せたり、三指を揃えることは極論必要性はないと考えられます。

例えば、三指を揃える手の内、人の指は薬指が人差し指より長い人もいれば、短い人がいます。薬指が短い人は三指を揃える手の内は難易度高いです。あるいは、小指と親指を揃える手の内にしても、小指が短い人はなかなかうまくできなかったりします。

であるなら、中指と親指の輪っかを結ぶだけの手の内ってほんま万能なんすよね。ひとまず、何の手の内を行えば良いか悩んでいる人は、中指を親指につけるようにすることを意識してください。なんてったって弓と禅の阿波研造がお話されていますからね。

物見

最後に、取りかけ、手の内が整ったら、物見動作を行います。顔を向ける時は、次のことに気をつけましょう。

・手首、肘を柔らかく物を抱くように気持ちで弓矢を保つ

・的を見る時に、頭部が前後に傾かないようにする。だいたい、後ろに傾く「照る」物見になりやすいです。

・姿勢が足先から頭部までまっすぐ伸びるようにする、頭部自体が前方に動かないようにする

意外に顔を向ける動作って難しいです。顔を向ける時に顔が傾いたり、頭部が前方に出たりします。これらの欠を取り除きつつ、次の打起し動作へ入って行きます。

・教本の弓構えの説明

「弓構え」は、いよいよ射の活動に移る直前の準備動作である。したがって「足踏み」「胴づくり」による基礎体勢を保持しつつ、呼吸を整え気力を充実して動作しなければならぬ。

弓構えには「正面の弓構え」と「斜面の弓構え」があります。正面は小笠原流、斜面は日置流の弓構えであり、いずれの弓構えにも「取り懸け」、「手の内」、「物見」が含まれています。

弓構え(左)斜面(右)正面。

以上の内容を理解することで、弓構え動作が完了します。

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