胴造りで行う3つのこと

この記事では、胴造りで行うべき4つのことを解説していきます。

弓を正確に引くために、姿勢の整え方を詳しく学ぶ必要があります。早速、具体的にやるべきことを4つ解説していきますね。

・アゴを引いて、首の後ろと背中を上方に伸ばす

・肩を耳から垂直に落とすようにする

・足裏の重心を全体に均一に乗るようにする

この3つを行えば、上半身をギュンッとまっすぐに伸びます。加えて綺麗な姿勢を作れるようになったら、さらに弓を楽に引けるようになります。

アゴを引いて、背中、首を上方に伸ばしましょう

首の後ろで背中を全部伸ばす

首の後ろを伸ばしましょう。そうすると肩の力を抜けます。

首の後ろには「後頭下筋」があります。この筋肉は背中の筋肉である「脊柱起立筋」とつながりがあります。

顎を引くと、後頭下筋が伸びます。その結果、脊柱起立筋を無理なく伸ばせるようになります。

もし、頭部の位置が下方に下がったとすると、背骨全体のどこかで強い湾曲が起こります。特に、首の付け根の骨が前方にずれます。すると、バランスを取ろうと他の背骨の部位が湾曲してしまいます。

胸が前方に突出しすぎてしまったり、腰が反ってお尻が突き出たりします。このように、胸やお尻が出てしまうと、背筋が張ってしまいます。すると、肩周りの筋肉が柔軟に動きにくくなるため、大きく弓を引けなくなります。

この時の意識は、「アゴを少し引いて、首の後ろを意識しながら伸ばす」「頭の頂点(百重)を10センチ上に吊り上げるように意識する」ようにします。

筋肉の力みを取り去るロルフィングの世界では、このような状態と似た教えで「スカイフック」と説明し、宮本武蔵の五輪の書には、「上半身が頭上につりさげられたる姿勢」とも説明しています。

このことを行うと、腰が前後にブレにくくなります。

肩を耳から垂直に落とすように意識する

僧帽筋は悪者っす!

次に、両肩を楽に落とすようにして、腕の力みを取るようにします。

人間には、耳から肩にかけて「僧帽筋」と呼ばれる筋肉があります。この筋肉は肩が上がったり、肩甲骨を寄せたりするときに収縮します。この筋肉を緩めるために、肩を下げるように意識します。

射において、姿勢の崩れは「胸やお尻の前後の突出」以外に「左右の肩の上下のずれ」があります。弓を引いている最中は、両肩の線は平行に揃っているのがよく、この姿勢を「三十重文字」といいます。

弓を引いている最中に、左右の肩が上がっちゃうと引きにくくなります(ただ、状況によって右肩が多少上がっても問題がない場合もあります)。そのため、胴作りにおいては、肩を下げて、胸を柔らかにしておいてください。

足裏が全体に均一につくようにする

足裏の重心=体の力みがわかる

最後に足裏の重心。足裏には、「全体に均一に乗るように」もしくは、初期の段階は「両足の中心よりやや前方に落ち着くように」しましょう。

この足裏の体重の乗り方で、「体の力み」が出ている箇所がわかります。教本三巻の佐々木範士は「足裏センター」と名付けて、「どこか一部に力が入っていたら、その足踏みは失敗」と解説しています。

その言葉の意味を分析しますと、解剖学的には

つま先に体重が乗りすぎていると、背筋に力が入りやすい

踵に体重が乗りすぎていると、腹部に力が入りやすい

こうしたことがわかるんですね。理想の胴作りの状態は、上半身全体が力まずリラックスしている状態です。つまり、全体に均一に乗るようにしないと、どこか一部の筋肉が張った状態で弓を引くことになります。だから、うまく行かないんです。

今、つま先と踵の一部に体重が乗るとと書いてありますが、人の体は精妙にできているものです。背中、お腹共に力が入りすぎてしまうと、肩周りの筋肉は動きにくくなり、呼吸もしにくくなり、背骨が上方に伸ばせなくなります。理由は、二つの筋肉のいずれかに力が入ると、みぞおち部にある「横隔膜(おうかくまく)」という筋肉が硬くなるからです。

この筋肉は、中学校のころ、「呼吸をすると、横隔膜が動いて云々」と聞いたことがあります。この筋肉が背中か腹に力が入ると動きにくくなります。それだけでなく、横隔膜が緊張すると、それに関連して肩や腰の筋肉も張ってしまうのです。つまり、足裏が体重のどこに乗っているのかは結構重要な問題です。

なお、弓道教本を読んでいる人は「教本の先生は足踏みでやや前方に置く」と解説しているのではと疑問に思う人がいるかもしれません。しかし、彼らの足踏みの開き具合を見ると、60度以上に踏み開いているのがわかります。大きく足を開くのであれば、体重を前方に置く必要があります。しかし、足の開き角度が60度程度の場合、前方に置くと背中の筋肉が張りすぎてしまいます。気をつけてください。

胴づくりにおいて他に覚えておきたい用語

さらに、これから弓道を学ぶ人、胴づくりをきちんと理解したい人は以下の用語を理解しておきましょう。

三十重文字

胴づくりの正しい体勢。縦軸である脊柱起立筋の線に対して、足踏みの線(体の重心の落ち着く地上線)と腰の線(両腰骨を左右で貫く線)と両肩を左右に貫く線の三つが、それぞれ直角に(十文字)に交わり、上からみるとひずみなく一線に重なった状態。

丹田(気海丹田)

臍下丹田(せいかたんでん)というに同じであります。気海とは「海の集まるところ」の意で、臍の下3センチ余りのところと言われて、古来呼吸の根ざすところといわれています。これは身体の重心位です。

参考文献:現代弓道講座7巻

胴づくりにおける参考文献

ついでに、胴づくりの説明を理解するための文章として、弓道教本一巻~三巻における説明についてまとめていきます。

教本、胴づくり説明
「胴づくり」は「足踏み」を基礎として両脚の上に上体を正しく安静におき、腰を据え、左右の肩を沈め、脊柱および項を真っ直ぐに伸ばし、総体の重心を腰の中央に置き、心気を丹田におさめる動作です。

教本各範士の胴づくりの説明まとめ
千葉範士……頭上は天に向かって無限に伸び、下体は地底に無限に徹る気持ち。重心は丹田に乗せる
宇野範士……足踏みの上に脊骨から頸椎を通し、真っ直ぐに伸ばして胴体を安定させる。一般に首がおろそかになる
浦上範士……腹部をわずかに前方に屈し、腰を引いて袴の腰板がピッタリ腰につくようにする(袴腰の準)
神永範士……腰骨の前側面をちょっと上に向けるようにして肛門を閉じ、股の付根を張る
高木範士……頭部、上体、下体の重心線が一直線に足関節に落ちる体勢に加え、背面の筋肉が引っ張られる程度に前
方へ少し曲げる

ここまで読まれた方は、胴造りについては基礎はしっかりできていると言えます。毎回の射で意識しましょう。次に、「下腹に力を入れると、射が失敗する」より、弓道における丹田の内容を正しく理解してみてください。

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