吉見順正の射法訓に「胸の中筋からよろしく左右にわかるるごとくこれを離すべし」という離れの説明があります。
この「胸の中筋から離れる」とは、具体的にどういうことかこの胸の中筋から離れるという言葉は尾州竹林の射法の考え方を使えば、理解することができます。
ここでは、「胸の中筋」から離れるの意味を解説していきます。
胸の中筋から離れるには「縦線から正しい横線を出す」体の使い方を理解する
「胸の中筋から離れる」とは、尾州竹林の四部の離れのことを説明しています。左手、左肩、右肩、右肘を烈火のごとく離すと、胸が開いたようになります。
まず、左肩、右肩が真横にすばやく切るように作動しないといけません。そうすると、左肩、右肩は真横に出るように体を使わないといけません。
左肩、右肩が真横に出るようにするにはどうしたら、いいか?それは正しい縦線から、横線の運動が働くようにしないといけません。この意味はもう少ししてから説明をします。
その正しい縦線から横線を出すためには胴づくりで「首を伸ばして肩根を落とす」ことを行います。これをすることで、横線の運動に良い作用が働きます。引き分け、会で首を伸ばして肩根を落とすと、脇周りの筋肉が固くなります。
首伸ばして、肩根を落とすことで、出た縦線が出た状態で会で伸び合うと「前鋸筋が働いた状態で左右に伸び合う」ことができます。
では、前鋸筋が働いた状態で左右に伸び合うとどうなるか?答えは「左右の肩が後ろに逃げにくく」なります。実際に首を落として肩根を落とした状態で、会の状態をとると、脇周りの筋肉が固くなった会になります。この状態で肩を後ろに動かそうとしても動かしにくくなります。
両肩が後ろに動かしにくくなると、弓の抵抗力に対し、両肩が引かれずに前に押し続けることができるため、この状態で弓を放つと、左右の肩が真横に離れ、胸が開くように離れるようになります。これが胸の中筋から離れるの意味です。
通常、弓を引くとき、前鋸筋の働いた会の状態ではなく、右肘や腕に頼った引き方をすると、両肩の線が前後にずれて(とくに右肩が引けて)離れることが多いです。
これは、正しい縦線から生まれた横線の運動ではなく、ただ単純に「横線だけ」で弓を引いてきた結果です。
一連の動作をまとめると、引き分けで首を伸ばし、肩根を落としながら、矢束いっぱい引いていきます。左手はななめ上方から徐々にまっすぐに押し伸ばす(骨を射る)ように押し、右肘は真横に押していきます。
そして、会に入っても首を伸ばし、肩に力を入れないように押すと、脇周りの筋肉が張ります。これにより、両肩が後ろに逃げにくくなり、肩甲骨が左右とも外側に広がるようになります。
この状態で離すと、両肩が左右の外側に真横に動き、見た目が胸が静止して、他の部分が左右に素早く開かれるため「胸の中心から開いている」ように見えます。
これが、胸の中筋から離れる離れ方です。尾州竹林、小笠原流でも、この胸を開くような離れを理想の離れと説明しています。
必要なのは、首を伸ばして、縦線を構成し、横線が変な方向にずれないこと。そして、この状態で大きく、できるだけ、矢束いっぱいに引くことが大切になってきます。