理想の会の形と中の状態を理解する

引き分けで矢束いっぱい引いたら、会の状態に入ります。尾州竹林では会を形の上で「五重十文字」が完成し、「延合、詰合」が体の中で起こると説明しています。

この五重十文字と、延合、詰合の状態を完成させると、理想の会がイメージできます。ここでは、会において重要な状態を解説していきます。

 五重十文字とは
射を行って、体と弓、矢の中で重要な十文字となるべきところがあり、これを五重十文字と説明しています。

その五つとは「弓と矢の十文字」「弓と手の内の十文字」「弽と拇指の十文字」「胸骨と両肩の骨との十文字」「胸筋と矢との十文字」です。

弓と矢の十文字は、もしもはずの番え方が上下して正十文字にならないと、矢を発するとき、矢色がつきやすいです。弓と手の内の十文字では手の内は前後上下左右に片寄らず、中四角中央の手の内でないといけません。

弽の拇指と弦の十文字を保つためには最初から受懸の方が良いです。胸骨と両肩骨との十文字jとは縦は胴の骨を真っ直ぐにして、横は左右の両肩の骨が上下なく水平であることを要します。

胸筋と矢との十文字を保つにはまず左右両肩の水平を基盤として左拳(手の内)と右拳(懸)が水平である必要があります。

 山で物を押している心境から延合、詰合の状態を正しく理解する
引き分けで引かぬ矢束、真の矢束に引き収めてからはそれが少しもゆるまないようにしなければいけません。左手は弓に押され、右手は弦に引かれやすいので、それに負けないように全精神を集中しなければいけません。

この延合、詰合の状態は形は静止していますが、中の状態は山の頂上で物を押している状態と同義と尾州竹林では説明しています。

尾州竹林の教義に「高山推車」ということがあります。修行上の心得では高い山の頂上へ車を推し上げるには困難がともないますが、目的達成のために決して挫折してはいけないという意味です。

しかし、この「高山推車」の訓は延合、詰合の心持にも引用できるものです。

肉体的には山の頂上近くの急激な坂道まで車を推し上げ、それを停止せしめているとき(休憩ではない)その車滑り降りないように山の頂上に向かって気力と筋力が躍動する心持ちに相当します。

少しでも気を緩めたならば筋骨も緩み、車は降ってしまうように中の運動は続いています。このように会(かい)における精神的、肉体的の働きを詰合、延合というものです。

詰とは当流では詰轄(つめくさび)と称しています。轄は車輪の端につけて車輪がはずれないようにするための鉄の爪です。

木造の家を建てるときに、柱と梁を組み合わせるために柄(ほぞ)で接合し、その柄(ほぞ)がゆるまないようにするために打込む堅質の木片です。

詰轄とは矢束一杯引き収めてから各関節が緩ませないようにそれぞれの関節に楔を打ち込むように一体になるようにつなげ、それぞれの関節に楔を打って締めることです。

 
延合とは、楔を打ち込んで締めてはいるが、その中にも弾力が必要であり、その弾力とは気力をもってどこまでも左右に延合うことです。

そして、この延合、詰合の状態が体の中で起こってきたら、人間の関節の中で特に5か所の場所の詰、延が重要視されています。それは、「五分の詰」「八方詰」です。

 五部の詰とは
五部とは、胸、左肩、胸、右肩、右肘の五箇所です。この五箇所が緩まないように楔を打つ心持で締め、かつ、胸を中心として左右に延合うことです。

胸の詰めは詰締めるという心持ちよりもむしろ左右に開き延びる心持ちを多く必要とするが、延びすぎれば楔が外れてしまうので逆効果になります。

五部の詰のうち特に注意しなければいけないのは左肩の関節の働きです。例えば、物体を彎曲して場合に場合に抵抗を最も多く受けるのは中央部です。

弓を引き収めたとき,の人体の中央部はおおむね左肩になります。そのため、左肩が受ける抵抗が最も多いといわないといけません。

さらに肩は左右上下前後に動き、筋力の用い方できわめて変動しやすいので、弓を引く場合に左肩の詰轄(楔)について十分注意を払うことが必要です。

尾州竹林が「右肩よりも左肩の方をやや低く押さえて弓を引け」という教義があります。これは、左手を強くしようと考えて、左肩の関節が浮き上がったり伸びすぎたりして、左手全体の働きを弱めるのを防ぐことができます。

五部の詰めは、五箇所の詰めと左肩を少し低めに抑えて、左右に延び合うと理想の会に近づきます。

 八方詰
八方詰めとは五部の詰めのほかに腰と左足と右足の三か所の詰めを加えた八カ所の詰めのことを言います。

左足の詰めと右足の詰め、楔の打ち込みかたは「膝を少し内側にしめる」ことです。これにより、腰の位置が両足の中央に安定するようになります。

また、尾州竹林では両脚の力の入れ方で横軸の運動を変えることができると考え、左足、右足の力の入れ方を左右少し変えることを説明しています。

具体的には左足は親指に力を入れ、右足は踵に力を入れるようにします。

これは、左足は親指を踏むことで左手を強くし、右足の踵を踏むことで、右手に多くの力が入り、退身になるのを防ぐためです。

腰の詰とはお尻を少し後方に引いて、丹田を大地の方へ向かわせて上半身をくつろがせることです。

以上、左足、右足、腰、胸(肩甲骨)、左肩、手の内、右肩、右肘の八カ所を楔を打ち込んだように少しも隙がないように締め合わせることを八方の詰、また総部の詰と説明しています。

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