適切な打ち起こしを行うためには脇の下の皮を活用する

小笠原流では「打ち起こし」のことを「打上」といいます。少しも弦を引かずに弓を上げるのを打上といい、弦を引いてあげるのを打ち起こしといいます。

ここでは、打ち起こしを適切に行うための心構えと筋肉の使い方を解説していきます。

 打上は煙が上がるごとく打ち上げるべし

小笠原流教歌に
風もなく空に煙の立ち上る心のごとく打上よかし

といい、その注に「迫らず緩まずき然として、中道を得るべき」と書かれています。

打上は弓構えのときの円相の取り方や取り懸けのしかたが誤ると、打ち起こしのときに左右均等な力配分が働かなくなってしまいます。弓構えで左拳が弓を握りすぎて変な方向に曲がっていたり、取り懸けで右拳の手先に力がこもっていると、打ち起こしのときに、左右均等の状態になりません。

静かに、中道をもって打ち上げるためには、最初の弓構えの状態が大切になってきます。

 打ち起こしは脇の下の皮がめくれるように上げる
この形からいけば、まず、打上は高い方が良しとします。これは、変に両拳のどちらかに力の方よりがなく、かつ力んでいなければ、打上は高く上げられることになります。

しかし、これにも矩があり、両肘は弓構えのときと同様にすこし曲がっていることが大切です。棚の物をとるようにやたら手を伸ばしてはいけません。

幾分両肘を外に曲げ、両腕卵形の形にして、大柄の射手なら本弭が臍の辺にくるぐらいまで上げます。このときの手の角度はおよそ45度くらいになります。

このくらい高く上げるために、小笠原流では、打ち起こしの時は脇の下の皮を伸ばせと言っています。

手を上げるのは、肩関節を使えば、30-35くらい、自分の頭から拳一個分くらいの高さまでは肩の力を使えば楽に上げることはできます。

しかし、それより上に上げるには、肩関節を上げないと腕を上げることができません。そのため、拳を自分の額からもっと上げるためには、肩ではなく、別の筋肉や関節を使う必要があります。

そこで、必要になってくるのが、脇の下の筋肉(前据筋)です。脇の下からすくいあげるように打ち起こすと脇の下の皮を伸びる感覚を得ることができます。この部位を意識すれば、高く弓を打ち上げることができます。

 打ち起こしは高く、自分の体は低くなるように
小笠原流射法「残身(ざんしん)」の条に、「是第一の味見也」といって両拳は弓をささげて悠々と昇り、自分の身は弓に分かれてどっしりと坐ることを言っています。

これは、打ち起こしのときに、腕や手先が力んだ状態で打ち起こすと自分の体も弓が上がると同時に力みが上半身に移ってしまいます。

なので、打ち起こしをするときは、上半身の力みがないようにするため、弓は高く、体を低くなるように意識します。

以上のことを意識することで、適切な「打上」動作を行うことができます。

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