物見を入れる本当の意味

 物見を入れる解剖学的意味

弓構えの動作の中には「物見」が含まれています。物見は目線を的方向に向ける動作です。

物見を入れる理由の一つとして、「狙いを定める」ことが挙げられます。ただ、体の仕組みを調べると、物見が射における重要性はねらい目以外にもあることがわかります。

例えば、教本には射の基本体として「五重十文字」が解いています。この際に、首筋と矢は十文字になると教本は記しています。

この内容の真偽に関わらず、五重十文字は古くの弓道書籍にも文章として残っています。つまり、射における首の向け方は、射型全体に非常に重要な意味を持っていることは間違いありません。

そして、首を的方向に向けることは射において重要な意味があります。これらを理解することで、適切に首を向け、射における押手の状態や引き分けの収まりを改善することにつながります。

ここでは、物見を入れる解剖学的理由について考えていきます。

物見を入れると左腕が伸びやすくなる

人が首を一方に向けると、腕に影響することがわかります。それは、首を向けた方の腕が伸ばしやすく、逆側の腕が曲げやすくなるのです。首を的方向にしっかり向けると、左腕がさらに前方向に伸び、右腕を曲げやすく(=引きやすくなる)体の構造になります(実際に行うとわかります)。

この事実により、引き分けのときに、的方向に首を向けると、さらにもう1,2センチ押手が伸びます。首を的方向にしっかり向けると左拳をさらに前方に押しやすくできるのです。

小笠原流では物見をするとき、アゴが左肩関節のへこみが生ずるところにくるまで向けると説明します。つまり、首を的方向に向けることで、より押手を的方向に押し込むことができるのです。

物見を行う上ではずせない右肩関節の安定性

ただ、首を向けたことによって良い利点は「左腕の伸ばし具合」だけでなく、「右肩関節」にも表れます。それは、顔をしっかり向けることで、右肩関節の安定性が強くなることです。

この理由として、顔を的方向に深く向けることで、右側の脇下の筋肉が張り、右肩関節が後ろに引けるのを抑えられるからです。

実際に以下のような実験を行ってください。まず、左腕を右脇下に当ててください。次に、その姿勢の状態で首を的方向(左方向)に向けてください。すると、右わき下の筋肉が動くことがわかります。首を動かすとともに、右脇下の筋肉や鎖骨が動き、右肩関節が少しだけ前に動くことがわかります。

首の側面には、「胸鎖乳突筋」と呼ばれる筋肉があります。この筋肉は喉ぼとけから鎖骨にかけてつながっている筋肉です。もし、顔を左に向けると、右側の胸鎖乳突筋が引かれます。すると、右側の鎖骨が後ろに引かれにくくなることで、右肩根の受けが強くなります。つまり、的方向に顔を向けることは、身体の仕組みから、押手や右肩関節の安定性に関係していることがわかります。

ただ、物見動作を考えるときに、注意しなければいけないことがあります。それは、顔を向けるときに、顔が左右に傾いてしまうことです。的方向に向けた顔が前に(背中側に)傾いてしまうことを「物見が照る」といいます。

このように、顔の向け方に不正が出ると、左右の耳の位置に高さに生じます。すると、耳に司る身体の平衡感覚に影響が出てしまい、胴造りの安定性の低下につながります。あるいは、目線の位置が変わってしまい、ねらい目に影響が出ます。

26メートル先を狙う際に、眼の位置が変わることが、どれだけ射に影響が出てしまうか考えると、物見動作は重要性を認識できます。物見動作で動かす頭部は、人の感覚器(耳・眼・鼻・口)などがある部位です。きちんと顔を向けることで、感覚器の位置がずれて、姿勢や次の動作に悪い影響が出ないようにしてください。

なお、眼の状態ですが、半分だけ開けて、ぼんやり見るようにしましょう。眼をカット開いた状態にすると、眼の奥の筋肉が過剰に働きすぎてしまい、緊張してしまうからです。もし、眼が緊張してしまうと、眼の奥の筋肉と解剖学的につながりのある首の深部や背中、肩の筋肉にもこわばりが出てしまいます。そのため、胴づくりで構築した上半身に無駄な力みのない状態から遠ざかってしまいます。

あるいは、口にも力を入れず、舌は柔らかくするようにしましょう。中には、弓を押している最中に、舌の筋肉を硬くしてしまう人がいます。舌の筋肉が固くなると、首の筋肉にも影響が出てしまい、体内を通る空気の気道を狭くしすぎてしまいます。すると、呼吸運動がしずらくなって上半身に余計な緊張を招いてしまう危険があります。

これは以下のような実験でわかります。弓を打ち起こすときに、何でもいいから近くの人と会話をします。そして、引き分けに入ったときに、声のトーンや雰囲気を変えないように引きます。

もし、打ち起こしの際に息を止めてしまう人、上半身に力が入ってしまう人は、弓を引いている最中にしゃべると声がうわずったり出しづらくなります。なぜなら、息を止めたり上半身が緊張していたりすると「口」の筋肉が過度に緊張してしまうからです。

実際に、阿波研造の弟子である吉田能安の書籍には、このようにして会の状態を観察していたとされる文章があります。そのため、物見においては、口、眼に過度に力を入れないようにします。次に、耳の位置が傾かないように、顔を向けるようにします。

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