胴づくりを行うもう一つの重要性

弓道の実力向上のために、本を読んで姿勢の取り方を勉強する必要があります。胴作りで行うべき事は。

・項を伸ばす

・背中を伸ばす

・両肩を下げる

の三つとわかります。さらに、覚えて欲しいのが、この三つの姿勢をとる事で、より力強く弓を押せるようになります。

え?どうして姿勢を伸ばすだけで弓を強く押せるようになるの?それは、両肩を下げると「前鋸筋」が張るからです。うまく姿勢を整えると、この筋肉を効果的に使えるようになります。

ただ、これを言っても「前鋸筋?なんだそれ笑」と思っちゃいますよね。ここでは、姿勢が整うと、弓を楽に弾けるようになる「前鋸筋」の話を解説します。

前据筋のを働かせる

まず、前鋸筋は「脇の下の筋肉」の事です。肩の筋肉の中でもかなり重要な筋肉です。脇の下の筋肉を使うメリットを紹介します。

まず、弓を圧倒的に楽に押せるようになる事です。弓を押す時に最後まで押し切れないのは肩が上がるからです。しかし、前鋸筋を使って押せるようになると、余計な力みなく最後まで押し続けることができます。

「前据筋」の話で有名なのが「アーチェリー」です。オリンピックでメダルを取る選手は共通して前鋸筋が発達していることで有名です。アーチェリーの引き方を見るとわかりますが、左肩がしっかり下がって弓を押せています。

プロの射手たちは正確に狙ったところに矢を放つためには拳や腕はほとんど動かさず、関節を1、2センチだけ真横に動かすことで正確に矢を真っ直ぐに出すようにしています。このとき「前鋸筋」が働きます。写真見てもわかる通り、しっかり肩を下げて、左手に力が入っておりません。これは腕に負担なく押すためです。

実際に、アーチェリー経験者に聞くと、弓を押し開く時の感覚を聞くと「腕ではなく、腕の付け根から押す気持ちで」とお話します。つまり、腕関節に過度な負担をかけないように、できるだけ胴体に近い部位から弓を押す事で少ない力で弓を押すことを可能にしているのです。

これを、弓道にも応用すると、左腕がブレずに楽に押せるようになります。なんとこの前鋸筋は胴造りで「あごを引いて、両肩を下げる」ことをすると、勝手に張るのです。

立った姿勢で首の後ろを伸ばし、両肩を下げてください。その状態で脇下を触るとカチカチに固まっていませんか?解剖学的に、肩を下げると、脇が締まるようにできています。

この原理を利用すると、良い姿勢によって、強く押すための筋肉を働かせられるようになります。が張ると、肩が上がらなくなります。

さらに、脇下が張るとさらに良いことがあります。両肩が後ろに引けにくくなります。

弓を引いている時に、左肩が前方に突き出ることがあります。これは、見方を変えれば「右肩が後ろに引けている」引き方になっています。この引き方になると、離れた時に弦が左胸や左腕にバンバン当たるようになり、けっこう痛いです。それでいて矢もまっすぐに飛ばない。しかし、この問題も脇下で解決できます。

首の後ろを伸ばして、両肩を下げて見てください。その姿勢を保持したまま、誰かに肩を押されても、両肩が後ろに引けにくくなります。脇が張ると、肩が左右にもブレなくなります。つまり、弓を引いている最中に、まっすぐの姿勢を保ったまま弓を引けます。

武道の世界でも、脇が空いた姿勢を「脇が甘い」と言いますよね。脇が空くと両肩は上や前に動きやすくなります。これらの欠点を脇下を張ると、解消されます。そのため、胴造りは重要とされています。

間違った肩の使い方、正しい肩の使い方

そして、ここまでお話すると、弓を引く時に間違った肩の使い方と正しい肩の使い方がわかるようになります。そのために、もう一個「僧帽筋」という筋肉も覚えてください。

人間の体には首の後ろから肩にある「僧帽筋」と、脇の下に「前鋸筋」があります。両方とも肩と肩甲骨を動かす時に使われる筋肉です。

なんとなく、弓道をされている人であれば、「弓を引く時に肩甲骨を使うのは大切だ!」というのはわかりますよね。ただ、二つの筋肉には、大きな違いがあります。それは、肩甲骨を開く時に

僧帽筋→肩関節が上がりながら肩甲骨が開く(上方回旋運動)

前鋸筋→肩関節が上がらずに肩甲骨が開く(回旋運動)

となります。同じ肩甲骨を開く運動でも、僧帽筋の場合、肩関節が上がってしまうんですよね。この筋肉を使うと悲劇が起きてしまいます。

打起しで僧帽筋を使うと、肩が上がってそのまま下がらないまま引き分けに入ります。加えて、肩甲骨が開くので、肩関節が前に上がった状態で弓を引きます。この引き方、右肩が前に出てしまうため、左肩が後ろに引けすぎてしまった姿勢になります。この姿勢になると、厄介な問題が起こります。

まず、右手にかかる力が大きくなります。右肩をあげたまま弓を引いてくると、肩が力んでしまい、その結果、右腕を最後まで後ろに引きつけることができなくなります。すると、矢を離した時に、右手が前に送られる送り離れになってしまいます。

加えて、僧帽筋が働くと、腕が力みます。つまり、肩甲骨が開いて、腕の付け根から押せているかと思いきや、「単に腕の付け根が力んだだけだった」ということになりかねないのです。

しかし、前鋸筋を使うとこの問題が解消できます。右側の前鋸筋が締まると、右肩が上がりにくくなります。

前鋸筋を使う事で、肩甲骨が左右に開きます。これによって、腕の付け根から押せるようになります。弓を楽に押すことができ、さらに肩周りが窮屈になりません。両肩の線が揃ったキレイな姿勢を維持しながら、力強く弓を押せる。そんな理想の引き方を叶えてくれるのです。

弓を上げて、押し開いて行きながら、下げて行く時、肩を中心に腕がダイナミックに動きます。そのため、押す方向が間違得たり、無理な引き方をすると、腕や肩に力みが生じます。前鋸筋はそした欠点を解消し、体に負担なく弓を押す役目を果たしてくれます。

縦の線から横の線が出るようにという言葉の意味を解く

ちなみに、「弓道教本」の中にはこのように書かれています。

「縦の線を作る事で、横線が出るようにする」

ちょっとなに言っているかよくわからねぇと思いがちですが、これは、前鋸筋のことをさしています。縦の線は脚、胴体、首、頭で作られる線を指し、横は腕、肩、胸で作られる線です。ざっくりいうと、「腕だけでなく、姿勢を良くして、体全体で押そう」という意味になります。

弓を左右に押し開いていくときに、腕や肩だけで押そうとすると、先ほどお話した「僧帽筋」に負担がかかってしまいます。そうすると、長く安定的に押せないのです。肩を痛める危険があり、離れる時に腕や手がブレてしまうため、矢が真っ直ぐに飛美ません。

しかし、そこで首を伸ばして両肩を下げます。これで脇の筋肉をスイッチをONにします。この状態を維持して弓を押して行きます。すると、腕だけでなく、「腕の付け根」「体の側面」「脚」と言った、縦線に関わる関節の部位も弓を押し開く運動に使えるようになります。つまり、体全体で弓を押せるようになるのです。

つまり、姿勢を正して、脇の筋肉をONにすれば、腕や肩だけでなく、胴体や脚の筋肉も使って、大きく弓を弾けるようになるのです。まさしく、縦線から横の力がでるのです。こうすると、矢も真っ直ぐ飛びやすくなり、たくさん引いても疲れません。離れたあとの射型もキレイになります。

まさに、達人のように、スムーズに矢をスパッと出すために、「肩甲骨が開く」ことは大切と言えます。その肩甲骨は、正しく姿勢を作る事で動かせるようになります。このように、「胴造り」は姿勢が崩れないだけでなく、弓も楽に押すために重要な動作であると理解してください。

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