母指球に体重を乗せると、母指球重心にならない

弓道で確実に上達をするのであれば、

母指球に体重を乗せない。踵に乗せる

このように意識することが大切です。踵に体重を乗せることで、背筋が伸びます。呼吸動作がしやすくなって、打起こし動作がしやすくなります。

しかし、このように解説すると、

「母指球に体重を乗せろ」と指導される人もいるから、母指球に体重を乗せた方が良いのでは?

と考える人もいます。しかし、このようなことはありません。実際には、母指球に体重を乗せても、母指球重心になりません。これは物理的にそのようになっています。

では、このように、なぜ母指球に体重を乗せると母指球重心にならないのか?実際に、物理学や用語の本当の意味を交えて解説したいと思います。

連盟の「拇指球に重心を乗せる」指導は、「母指球重心」ではなく、「母指球荷重」の姿勢である

まず、「母指球重心」の言葉の本当の意味を理解するために、「重心点」と「荷重点」の違いをわかる必要があります。

ある物体には、地球上の重力がかかっている場合、「重心」と呼ばれる点が存在します。車に例えると、車は重力を受けている限り、その場で止まって存在します。その車にも「重心」が存在します。

例えば、その車に別の車が衝突したとします。その車の先端にぶつかったとすると、車は回転して吹き飛ばされます。ここで、なぜ回転するかを重心を交えて説明します。

重心とは、その物体の中で一番動きにくく、結果的に重さのかかった部位です(意識的ではなく、自然とです)先ほどの例でなぜ車は回転するかは、重心が中心部に存在しているからです。

一方、別の車が衝突し、車の先端に圧力がかかりました。このとき、圧力や重さが乗った点を「荷重点」と言います。そして、回転している最中は中心部は変形したり動いたりしません。

つまり、重さが乗っかった部分を「荷重点」と解釈します。

ということは、連盟のお話される

母指球に体重を乗せましょう(少し体を前かがみにするように、母指球に体重を乗せよう)

の指導は、正確には「母指球重心」ではなく「拇指球荷重」の姿勢が正解です。

この解釈、正確に理解しないといけません。なぜなら、「拇指球に重心を乗せる」とは、「拇指球付近に意識的に体重を乗せる」わけではなく、結果的に、重さが乗っかったかのように、固定させることを意味しているからです。

自分で体重を乗せるのと結果的に体重が乗ったかのようにその部位が動かないことは全然違います。この意味を取り間違えると、適切な姿勢を保てないどころか、全く弓を引けなくなってしまいます。

母指球に体重を乗せると、正確には中指付け根重心になる

では、先ほど連盟の指導でよくある「母指球に体重を乗せる」ようにすると、「母指球重心の姿勢」になるでしょうか?なる人もいるかもしれません。しかし、物理的には、母指球に体重を乗せ続けるのは難しいと言えます。

実際には、母指球重心ではなく、中指付け根重心になります。

なぜなら、母指球に体重を乗せると、足裏の重心位置が不安定だからです。安定を取ろうとすると、どうしても重心を中指付近に収めないとたつのは難しいです。

足裏は、地面と3点「踵」「親指付け根」「小指」の3点で支えられています。この中で、踵が表面積が大きく、親指付け根、小指付け根は小さいです。

もし、親指付け根(母指球)に体重を乗せようとすると、表面積の大きい踵に乗る体重が少なく、逆に表面積が小さい親指に体重が乗ることになります。この状態が続くと、足裏が痛い、もしくは体重を支えるのが難しくなります。

では、親指付け根だけで支えられなくなってしまった場合、結果的に小指付け根あたりにも体重を多めに乗せるようになります。これによって、親指付け根の負担が軽減されます。しかし、こうすると体重を乗せる荷重点が親指と小指に集中するため、親指付け根の負担がへる分、動かしやすくなります。

つまり、母指球重心=一番母指球が固定された状態となり得ないのです。この場合、固定された場所は中指付近になります。

この内容については、詳細に説明された文献として梅路見鸞の「心月射儀」の内容について解説していきます。

後ろに反る者は、指の根本よりつま先の間なり。但し、指に力を見ゆるは既に足踏みの正しきに非らざるものと知るべし

・・・・・以上言ふ力の中心は、射身正直に得るための定にして、即ち足裏扁平に大地に吸着せしむる為のみ、本来中心等の存すべきもの非らずと知るべし(心月射儀、足踏み「力の中心」より)

母指球に体重を乗せると、解剖学的に太もも裏側の筋肉が張って、骨盤が前傾します。その結果、後ろに反ったような姿勢になりやすい為、「母指球に体重を乗せる」=「後ろに反った姿勢」になったと考えられます。

このように、母指球に体重を乗せる行為は正しい足踏みを構築するのに不具合と文献上説明ができます。

本当に母指球付近を重心にしたければ、

では、連盟の指導の通りに、母指球に重心を起きたければ、踵に体重を乗せてください。

踵に体重を乗せることで、親指と小指が動かしやすくなります。ここで、草履やわらじを履く際に、鼻緒を二つの指ではさむように少し足指を曲げます。すると、拇指球付近の関節に「荷重」をかけずに、拇指球付近の関節が動きにくくなります。

このように、踵に体重を乗せることで、母指球への負担がなくなって、結果的に母指球が動きにくい(重心)となります。

ここまでの話の内容をまとめると、「拇指球重心」は、拇指球に体重を乗せることではありません。「重心」が「拇指球」にあるためには、その部位に余計な力が入ってはいけません。そうではなく、拇指球付近が変形しずらく、動かないように関節を整える必要があります。それによって、「拇指球に重心がある」状態を作れます。

つまり、踵に荷重をかける=拇指球重心になるとわかります。

オリジナルテキストをダウンロード