昇段審査の筆記試験で注意したいこと

今回は、昇段審査の筆記試験を受ける際に注意するべきことについて解説していきます。

昇段審査では、体配動作の手順を確認して形式的に審査しますが、筆記試験でいくつか大切なことがあります。

ひとまず、関東全域、関西地域、昇段審査の筆記試験を受けられた方に注意点や書くべき内容について聞いてきました。参考になれば幸いです。

問題の解答は必要な用語を入れて文章の要約を意識しよう

審査で出る問題は基本的に教本から出題されます。そして、教本の文章を見て、まずは文章を理解してください。そこから、必要な単語を取り入れながら、要約するようにしましょう

この理由は、採点しやすくするためです。

例えば、次のような問題が出ます。

・射法八節を述べ、「胴造りについて説明しなさい」

「胴造り」は、「足踏み」を基礎として両脚の上に上体を正しく安静におき、腰を据え、左右の肩を沈め、脊柱および項を真っすぐに伸ばし、総体の重心を腰の中央におき、心気を丹田におさめる動作である。

この場合、弓の本弭は左膝頭におき、右手は右腰の辺にとる……

この後にも文章が続きます。

確かに、すべての文章を暗記すれば、それに越したことはありません。しかし、そのようにすべての文章はなかなか覚えられないうえに、審査員にとっては見にくいととらえられます。

地方審査の場合、昇段審査の受審数は100人以上います。100人の解答を一つ一つ丁寧にみて文章が一字一句間違えていないか見る時間はありません。実際に、審査員数人に聞いてみたところ、

「文章の中に必要な単語が入っているかを見ている」

「全ての文章を一つ一つ読んでいる時間はない」

と回答をいただきました。

もちろん、段が上がるにつれ受審者数が増えるので、この内容は当たっていないかもしれません。しかし、地方審査まではこの考えに沿って回答を書けば問題ないと判断できます。

したがって、文章丸暗記の勉強は非効率なうえに、その頑張りを高く見てくれない可能性があります。その場合、要約を意識してみてください。

例えば、次のようになります。

胴造り

「足踏み」を基礎として両脚の上に上体を正しく安静におき、腰を据え、左右の肩を沈め、脊柱および項を真っすぐに伸ばし、総体の重心を腰の中央におき、心気を丹田におさめる動作である。

この場合、弓の本弭は左膝頭におき、右手は右腰の辺に取る。天地に伸び、左右に自由に働ける構えを作る。その際に気息を整えるのが肝要である。

「胴造り」には、反・屈・懸・退・中の五つの胴があり、これを五胴「五身」とする。

このように、必要な単語を取り出して要約すると、覚えやすいし採点しやすくなります。すべての文章が覚えられない場合、要約でも問題ありません。まずは、要約した文章を組み立てて覚えるようにしましょう。その後に、余裕があれば詳しい説明を肉付けしていけば問題ありません。

先ほどお話しした胴造りにおける「五胴」の詳しい説明を入れてもよいでしょう。もしくは、胴造りが重要な動作である一文を付け足してもよいです。最低限覚えなければいけない内容をまず決めて、必要な用語を入れるようにしてください。そうすれば、出題される内容の解答を効率よく覚えられます。

目標は、全ての文章の6~70%の内容をかけるようにしましょう。審査では、二つの問題が出題される場合がほとんどです。それらの内容について6~7割程度の完成度で回答をかけば十分に合格します。完璧に書こうとせず、要約してまとめるようにしましょう。

必要な単語の決め方

ただ、審査員といえども一つ一つの問題で取り入れなければいけない単語までは全てわかっておりませんでした。そのため、「必要な単語」については、あなたが推測し、考えていかなければいけません。

ただ、難しく考える必要はありません。必要な単語は全体を見れば想像しやすくなります。例えば、必要な単語になる可能性が高いものについて紹介します。

1、その用語の説明文

この説明文は必ず必要です。覚えるようにしましょう。

胴造りは~~で、~~の動作である

離れは~~で、~~です。

2、その説明文にしかない用語

その説明文にしか載っていない単語も入れるようにしましょう。

例えば、胴造りには「五胴」、会であれば「伸び合い」「詰め合い」、離れでは「会者定離れ」という言葉があります。これらの単語は、重要度が高いと考えられます。したがって入れるようにしましょう。

3、細かい説明は省いてもいい

もし、文章全体を暗記できない場合は、「細かい説明文」は省いてみましょう。

例えば、弓構えでは取り懸けの説明があります。

弽の拇指を弦にかけ、四つ弽の場合は、薬指で拇指と人差し指を添える。三つ弽の場合は中指で拇指を押えて人差し指を添え、ともに拇指ははねるようしてやわらかく整える。これを「取り懸け」という。

この文章が全文を暗記できない場合、あえて割愛して説明しましょう。細かく説明しているところは必要な部分だけ取ります。例えば、

弽の拇指を弦にかけ、中指(三つ弽)、もしくは薬指(四つ弽)で拇指をおさえて人差し指を添えるこれを「取り懸け」という。

このくらい短くすれば覚えやすくなります。余裕が出れば、「拇指をはねあげる」などの言葉も覚えるようにしてください。まずは、必要な箇所だけ覚えてみましょう。

射、体配の説明を主観的に書くと注意が入る場合もある

ちなみに、射や体配に関する問題で、主観的な文章を書いても、加点につながらない可能性があります。なぜなら、そのような意見、感想を書いても採点者は正しいのかどうか判断できないからです。

例えば、とある関東の審査を受けた女性から審査中に「審査員に指摘された」と嘆いたメールをいただきました。その内容を聞いたら、三重十文字に関する問題に関して自分の意見や考えを書こうとしたのです。

三重十文字の内容は、教本で見ると非常に短いです。正直言うと、文章全体も覚えられるくらい内容が少ないです。それでは解答用紙があまりに空きすぎるので、その女性は内容をうめるべく、自分の意見を書いたそうです。しかし、その時に女性の解答をみた審査員から試験中に軽い注意が入ったそうです。

「試験は、教本に書いた内容だけを書けばいいですからね」と審査員から忠告があったようです。そのため、その女性はその文章を消して、教本の内容だけ解答して用紙を提出したそうです。

このように、自分だけの主観的な内容を記すと、かえって審査員に注意される可能性があります。したがって、あまり無駄なことは書かないようにオススメします。もし、書くのではあれば、その用語に関連する内容を書くようにしてください。

三重十文字であれば、教本一巻以外にも記載されている箇所があります。その内容を入れてみて解答を埋めるようにしてください。個人の意見や感想はかえって審査員にマイナスの印象を与える可能性があります。

作文では、できるだけキレイ事を書くようにする

地方審査の無指定~弐段の場合、「あなたが弓道を行おうと思ったきっかけは?」「弓道修練を行う目的は?」という作文があります。結論からお話しすると、「なるべくキレイ事を書く」ようにしてください。

キレイ事とは、具体的に教本に乗っている理念や考え方に関する内容です。「真善美」「和の精神」「正しい形」「礼儀作法」などです。これらに対して共感し、弓道の稽古をしていると文章を書くようにしてください。

この内容に共感しない文章を書いても、高い点数は期待できません。ひとまず、意識した、しないにかかわらず自分が弓道連盟の会員としてよいと思う箇所を上げ、それを意識して書いてみてください。

例えば、私が弓道を始めたきっかけは、好きな先輩がいてその先輩と仲良くなりたいという下心から始めたものでした。弓道の動作がかっこいいとも体配が素敵と思ったことは一度はありません。このように解答しても、点数は低いです。弓道連盟の審査員にとって共感されにくいからです。

「礼儀を学ぶため」「心身を鍛えるようにするため」と記した方が、読み手も読みやすいし、共感されやすいでしょう。できるだけ、稽古しているときによかったと思う点を思い出し書くようにしてください。そうすれば、作文でも合格点を取ることができると思います。

欠点:これらの内容は更新される可能性もあります

ただ、こうした内容を書いたとしても、残念ながら「地方によって異なる」というのが正直なところです。

例えば、関西と東北地方の審査の合格率を聞くと、2019年の初月では50%の開きがあったと報告がありました。その筆記試験の内容を聞くと、体配や試験の厳しさが異なります。

例えば、ある地域では、どの内容が出題されるか事前に教えてくれるし、解答用紙は半分以上空白でも問題ないようです。しかし、別の地域の筆記試験は内容も難しく、解答用紙が空いていると、内容の記述が浅いと判断される可能性があると情報がありました。

結局審査員が変わると、地方の連盟の方向性が変わると、試験は難しくもなるし、原則ですが、連盟の試験はほとんど統一されていません。したがって今回の情報も使える内容でなくなる可能性もあります。使えるときに活用し、さっさと受かるようにしましょう。

筆記試験では、できるだけ「必要な単語を取り出して要約する」「主観的意見はあまり書かない」「作文では、キレイ事を書く」ように意識してください。今後の審査基準にもよりますが、筆記試験の問題を効率よく勉強し、受かりやすくなります。

 

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