手の内を理解するには、三つのことだけ学べばいい

弓手の手の整え方を「手の内」と呼んでいます。弓道の世界ではこの手の内はとても難しい射技の一つといわれています。

ただ、このように考えるのはやめましょう。手の内=難しいという価値観をつけられたのは、弓道連盟の勝手な考えであり、実際は手の内の内容自体は難しくありません。三つのことを覚えるようにしましょう。

・形の説明は「会から離れの時の形」を指している

・軽く握って硬く握りすぎないようにする

・しょうこんで押すようにする

この三つを考えるだけで十分です。この記事ではそのように考える理由について解説していきます。

手の内は指の握り方の教えではない

大多数の連盟では手の内の内容をちゃんと教えてくれませんので、真実をお話しますと、手の内は「指の握り方」の教えではなく、「離す瞬間の形」のことを指しています。

その根拠は昔の文献にあります。今の弓道の世界は手の内を弓構えで記載するように解説されていますが、昔は会のときに解説されています。矢を離す際にどのような左手の形を持って押すかを教えるためです。

ちょっと難しい話になるのですが、手の内の教えの中に、鵜の首、三毒、骨法陸、という教えがあります。これらは、昭和中期の弓道家は弓構えでその握り方を解説しています。しかし、これらの内容を江戸時代の書籍からさか登って調べると、手の内の教えが会に記載されています。

ここでは文献の名前とか詳しくは覚えなくて良いですが、手の内の教えを詳しく書いた文献は「尾州竹林派」を調べればわかります。この流派は、あらゆる弓道の流派の源流となる流派です。その竹林の書籍の内容を解説した書に四巻の書があります。この書籍では手の内の教えは弓構えで記載されています。

しかし、それらの竹林派の内容のもっと初期の内容(尾州竹林弓術書)になると、手の内の内容は、会に記載されています。加えて、本多利実の弓術講義録という文献も手の内の教えは会の段階で記載されています。

つまり、もともとの手の内の教えは「弓構えでの形」ではなく、「会の時の形」と解釈するのが正しいです。

そのため、弓構えの段階で三指を揃えましょうと離されることがありますが、これは意味がないです。なぜなら、大三で弓の位置が変わるからです。手の中で弓が変われば、握る形が変わるのは容易に想像つきますよね。

そのため、弓構えのときに、三指を揃えようとしたら、「指を握る」ときに揃えてできた気になってると思います。それでは後で崩れてしまうんですよ。

だから、手の内は、握り方の形だけ覚えるのではなく、逆算する思考を身につけないといけません。

そのため、例えば手の内で三指をそろえるように指導を受けたとします。そしたら、

→弓構えで、三指を揃える

これだけの動作で、「よっしゃ、俺は手の内できてる」て思っちゃダメダメです。本当はこう考えないといけません。

手の内は三指をそろえるようにするのか。

→じゃあ、手の内は会の段階の形のことを指しているので、その手前の動作で握り方を変えないといけない。

→大三では、弓が手の中に内側に食い込むように入ってくるよな。ということは手前の段階では弓を浅く握っておかないといけないな。

じゃあ弓構えでは、弓を浅めに握っておこう。そうすれば、会に入ったら三指がそろいやすくなる。

ここまで逆算できて初めて「手の内の使い方をわかっている」といえます。できれば、「なぜ会に入ったときにゆびがそろってるといいか」の理由まで説明できるとなお良いですね。逆算して、目的の手の内ができあがるように、「弓構えでの弓の握り方」と「弓の押し方」を考えられるようにすれば良いです。

手の内の形が崩れる=悪いと思っては行けない

そのため、手の内の形が崩れてもあまり気にしないでください。

私、離れたときに指が離れて形がぐちゃぐちゃになってしまってるんです。という人がいますが、

弓構えで三指そろえたらそりゃ後で形崩れるに決まってますよね。まず、手の内の形が崩れた=できてないではないです。その思考と思い込みを変えるようにしましょう。

その場合、最初の握り方を変えれば良いです。その完成形になるまで押し方から腕の伸ばし方、最初の握り方まで考えられるかです。

少なくとも弓構えの段階で三指を揃えれば、後で三指をそろえる手の内が崩れるのは当たり前ですよね。まず、弓の握り方を変えることから始めましょう。

軽く握って固く握りすぎない

では、誰でも実践できてかつ実用性が高い弓の握り方を解説しましょう。まず、固く握らない!フワッとソフトに弓を握るようにしてください。

この理由は、固く握ると弓が手の中で回らないからです。

どうして、離れで弓の握り返したり、左手が外側に曲がりすぎたりするのは「弓を握りすぎるから」です。大三で弓を握りこんでしまい。引き分けで弓の反発力が左手にこもります。そして、最後の離れで弓が手の中に動いたときに力が抜けてしまい、手の内の形が崩れます。もしくは、弓が動いたと同時に左手首がもってかれてしまい、左手首が外に曲がります。

これらの欠点を指を軽く握ることで解決します。軽く握るとスルスル弓が手の中を回ります。そうして、引き分けで左手に力がこもることなく、弓を押せます。

軽く握る時のポイントを二つ紹介しておきます。「指先に力を入れないこと」と「薬指、中指の根元が弓につかないようにすること」です。この二つを意識しておけばひとまずオーケーです。

指先は力を入れず、軽くまげるだけ。指先は、人体の中で一番血流が滞りやすい箇所です。ここが力めば、10万キロ以上ある人の血管の全身の血流が悪くなって体が力んだり、腕が動きにくくなります。

次に、手の中を丸くふんわり包みこむように弓を握ってください。そうすると、薬指と中指の付け根が弓から離れます。この二箇所が離れると、次の大三で左手が動かしやすく、かつ弓を入れやすくなります。こうして、余計な力みなく、最後まで弓を押し続けられます。

掌根で押す

下から突き上げるように弓を押す

そして、最後に、弓を真っ直ぐかつ勢いよく矢を放つために「掌根で押す」意識を持つようにしましょう。

掌の中で小指の付け根から3から5センチ手首側に離れた所に「掌根」と名付けられています。掌根で押すと、少ない力で弓を楽に押せることがわかっています。

そのため、ここを使います。やり方はシンプルに「小指をしめて、下から突き上げるように押す」

弓を押していくときに、小指を少し締めて、少しだけ手首を立てるようにすると、掌根から押せるようになります。「楽に押せる」といった根拠は、こうすると、「人差し指と親指」にかかる圧力が減るからです。

弓が押しにくくてしんどいと思うと人って「人差し指と親指の間で無理に弓を押しこむ」ようにしています。これを弓道の世界で「上押し」と言います。このように押すと、左腕が棒のように突っ張ってめちゃくちゃきついんです。そこで、掌根で押すように意識をすると、二つの指にかかる圧力が減るので、楽に押せます。

ちなみに、小指を握ると、小指側の腕の筋肉が締まり、手首が曲がりにくくなります。この筋肉を解剖学では「下筋」と呼ばれています。「下筋」が働くと、手首が曲がりにくくなり、上押しで手首が下に曲がったり、べた押しで手首が負けたりすることがありません。離れた時の手首の曲がりも少なくなります。

このように、手の内で学ぶことは

・会で理想の形になるように逆算して考える

・軽く握る

・掌根で押す

の三つを行うようにしてください。これによって、さらに楽に弓を押せるようになり、矢も真っ直ぐに飛ばしやすくなります。

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