教本の胴づくりの本質的な意味を分析する

 

 

胴づくりにおける姿勢の保持は、弓道上達に欠かせません。実際に教本二、三巻での先生の胴づくりの説明では、「足踏み、胴づくりがきちんと整わなければ、射は上達しない」と説明されている方がいます。

 

ただ、教本を見ると、胴づくりの説明では、「脊柱、項を真っ直ぐに伸ばし」と説明されています。この他に、「五胴」と呼ばれ、背骨が屈んだり反ったり、体の両側面部が左右に傾たり、そのどれでもない真っ直ぐな姿勢を記載し、近的に適しているのは中胴(=真っ直ぐに上体が伸びた胴づくり)と説明されています。

 

ただ、実際には、中胴が適しているといっても、なぜ適しており、かつ強調されているのかご存知でしょうか?実際に、弓道の稽古を行う方であればわかると思いますが、胴づくりが崩れている人であっても、的中している人は多くいます。背筋が丸まっている人や右肩が後ろに引けている人であっても、矢飛びは別にして、的中している人が多くいます。

 

では、なぜ胴づくりにおいて、首、脊柱を伸ばすことを強調されているのでしょうか?ここでは、胴造りの「伸ばす」ことの具体的な意味や考え方について解説していきます。

 

形だけ伸ばした姿勢を取ると、射が悪い方向に進む

突然ですが、あなたは「背中を伸ばしてください」と言われたらどこを意識しますか?大部分の人は背筋を曲げず、ピンと伸ばそうとします。つまり、体育の授業のときに行った「気をつけ」の姿勢を取ります。この姿勢を取ると、見た目は背中が真っすぐになっています。

 

そのため、多くの人は「気をつけ」の姿勢のように形が真っ直ぐに伸びた姿勢を胴造りと思いこんでしまいます。しかし、実際に気を付けのように姿勢を取ると、背中の筋肉はガチガチに固まっています。

 

この理由として、「気をつけ」の姿勢のように、背筋を伸ばした姿勢は、背筋を固くしてしまうからです。その本質は「足踏み」にあります。足踏みによって、60度に脚を踏み開きます。この角度は、太ももを外に開くための筋肉が働きやすく、骨盤がほぼ垂直に立ちます。教本二巻の神永範士の足踏み、胴づくりの説明に記されている「少し、骨盤を立たせるようにする」ように立つことができます。

 

もし、骨盤が真っ直ぐに立った状態で胴づくりで首の後ろと脊柱を伸ばすようにします。すると、24個ある背骨の骨が積み木のように上方に積み重なります。この状態は背中の後ろ、前側の筋肉に余計な力みのない姿勢となります。この姿勢を保持すると、打ち起こしから引き分けにかけて起こる背骨の「反る・屈む」状態、「右、左に傾く」状態をおさえることができます。

 

もしも、骨盤の傾きが前や後ろに傾いたままであり、首や背骨を伸ばす意識がなくなったとしましょう。すると、上半身の前後、左右のどちらかに何もしなくても力みが起こります。解剖学的には、人の骨盤が前に傾くと、後部の筋肉(背中)が張り、後ろに傾くと前側の筋肉(腹部の筋肉)が張ることがわかっています。

 

首も背中も伸ばす意識もなくなれば、足踏みにおいて、骨盤の角度は垂直に定まりにくくなります。もし骨盤が前に傾いたまま、背中の筋肉が張ると腰部の骨(腰椎)が前方に滑ります。すると、反る胴になります。腹部の筋肉が張ると、胸部の骨(胸椎)が前方にずれます。すると、胴体が反ったり屈んだりした姿勢になります。

 

人体の筋肉は、力が入ってから、筋力として発揮し続けられるのは、長くても30秒程度と言われています。もし、このような張った姿勢で稽古をしていると、胴体部の筋肉が無駄に力み、弓を引く動作において活用されません。すると、胴体の崩れが直せなくなり、結果として弓の実力が徐々に低下していってしまいます。

 

つまり、胴づくりにおいて「首、脊柱を伸ばす」意識が大切な理由は、上半身の前、後ろの筋肉に無駄な力みやゆるみをなくすためです。背部、腹部の筋肉を上方に伸ばし続けることで、骨盤、胸部、頭部の位置が不用意にずれることがないため、引き分け以降に胴造りのブレがすくなくなります。

 

逆に、首や脊柱を伸ばすことではなく、形だけ背筋を正そうとすると、内部の筋肉のどこかに凝りや張りが生じます。このような、姿勢が稽古中に続くと、姿勢の歪みとなって癖づきます。よって、胴づくりの姿勢が変形し、腕の力みが大きくなったり、弓を押すための力が低下します。

 

実際に当サイトの練習会で、首と脊柱の伸ばし方を解説しただけで、打ち起こしの肘の角度、引き分けでも右ひじの軌道が変わり、「前よりも弓が引きやすくなった」「矢どころが収まり、的中率も上がりました」という報告をいただきました。弓を引く動作は、脇下や腕の裏側の筋肉が関係します。ただ、確実に上達したいのであれば、その前に胴づくりにおける背骨が真っ直ぐに伸びた姿勢を構築する必要があります。

 

胴づくりにおいて、力ませたくない筋肉

では、胴づくりにおいては、どの筋肉を力ませないようにしなければいけないのでしょうか?それは、大きく三つの筋肉があります。

 

・腹部の筋肉(腹横筋、腹直筋)

・背部の筋肉(脊柱起立筋、腰方形筋)

・身体の側面の筋肉(腹斜筋、前鋸筋)

 

このように、胴づくりでは、胴体部の筋肉では、無駄な力みやゆるみがない筋肉の状態を理解し、実践する必要があります。古くの書籍の場合、心月謝儀の梅路見鸞氏が記した心月謝儀の胴づくりの項を読めば、理解が深まります。

 

心月謝儀 梅路見鸞 胴づくりの項

一、脊柱の彎曲、腰部の場合は、股の付け根より膝の上部まで肉の弛みを覚ゆ。中部上部の場合は、胸腹の間委縮を覚え、腰部僅かに後退の気味を覚ゆ

 

二、下腹の硬直、心気の停滞、気力の集結を覚ゆ。ただし、下腹に必要以上に力を入れたる時、以上の失あり、

下腹に力を入れてと云うは、幼稚なる修養にして、自然心気の結滞あり、自然の運行を妨ぐること甚だし。以下省略

 

三、左傾、右傾、左傾は右足、右傾は左足に浮き気味を覚ゆるとともに、傾ける方に必ず中心あるを覚ゆ。反身は言を俟たず、自ら胸部下腹部に気停ありて、前半身浮きて治らず。

 

以上の内容を理解することで、胴づくりにおいて、なぜ首の後ろ(項)と脊柱を伸ばす必要があるのかが理解できます。首と脊柱を伸ばすことで、頭部、胸郭の位置が上方に伸び、腹部、背部の筋肉が伸びます。これによって、背中の骨が上方に積み木のように積み重なります。腕や手首の力みが軽減され、弓の引きやすさが変わります。

 

弓道の実力を伸ばしたい方は、胴づくりにおける教本の文章の理解を深めるようにしましょう。上達のキッカケは弓の引き方や手の内ではなく、胴づくりにあります。

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