足踏みで「的」を見すぎてはいけない理由

足踏みは足を踏み開く動作で、その方法は左足の拇指球を的の中心一直線上に置き、延長線上に右足先を置く動作です。そのため、射場に立つときに多くの人は以下のように動作を行います。

 

・的をきちんと見て、左足を的の中心線にそろえるようにする
・足踏みがずれてしまったときは、左足や右足を動かして修正する

 

あるいは、弓道場によっては、的の中心とわかるように射場に目印を置くようになりました。このため、足踏みは「的」「目印」を見て合わせるようにする人が多くなりました。

 

ただ、このようなことを行うことで、弊害が起こることもご理解ください。具体的には、的をきちんと見ないと適切な足踏みが踏めなくなることです。そして、自分の目にあまり便りすぎると、かえって適切な位置に足が踏めない可能性があります。

 

眼球は無意識に動いている

弓道において、的を目で見て確認して踏んではいけない理由の一つに「人の眼球は、止まっているようで無意識に動いている」のがわかります。

 

このことは、簡単な実験でわかります。例えば、何か静止しているものをずっと見てみてください。すると、数秒間続けていると焦点がぶれてきたりゆらゆらしてくる感じがわかります。これは、時間がたつと、眼球が無意識に動いてきて、視界自体が変わってきたからです。

 

これは専門用語で「眼球振盪(がんきゅうしんとう)」と言います。眼球振盪とは自分の意思とは関係なく眼球が動く現象です。そして、眼球振盪は正面注視(正面を注意深く見続ける)することで発生します。

 

つまり、私たちは同じものを同じ角度で同じように見続けるのが難しいのです。これはあらゆるスポーツを見れば、容易に理解できます。

 

例えば、ゴルフにおけるパターは非常に難しい動作です。確実にはいると思ったパーが「ギリギリのところでホールに入らなかった・ボールが反れた」といった光景は見たことがあるでしょう。このように、きちんとボールを正確に転がせない理由として、「静止しているものを同じように見続けることが難しい」からです。

 

たとえ自分が「真っすぐ」に見ているように見えても、実際には見えていないのです。それに加えて、疲れてきたり、緊張している場面であれば、より一層無意識の眼球の動きが現れます。それ以外のスポーツでも「ちゃんと見て、イメージ通りに動作したつもりが、そうならなかった」という現象はよく見かけます。

 

これは、弓道の世界でも同様です。弓道は、アーチェリーを含め、スポーツの観点で見ると「正確性」を求められる武道です。そのため、眼球の無意識の動きによる、見ているものや視界がずれているのを認知することは大切です。

 

しかし、そこで足踏みで左足を踏むときは「的を見て踏む」「目印にきちんと合うように踏む」ことを続けていると、この「無意識のずれ」が起こっていること自体わからなくなります。目印もある、的の場所も変わらないといった環境で弓を引くためこのような無意識のずれが起こっていること自体に気づきません。

 

これがわからないと、会で的を見るときにも無意識に眼球が動き、視界や見ている商店がずれていることに気づきにくくなります。

 

目に頼りすぎると、弓が引きにくくなる

足踏みにおける的の中心線に合わせたとしても、ねらい目をあまりにこだわりすぎると、かえって離れ動作や矢飛びに悪い影響を与えます。なぜなら、弓を引いている最中に「目」を意識しすぎると、眼球の動きが止まり、眼球周りの筋肉に力が入るからです。

 

眼球は、常に少し動き続けています。そこで、的をさらに注視してしまうと、眼球周りに力みや緊張が走ります。これによって、眼球だけでなく、首の深部の筋肉、肩の筋肉といったつながりのある筋肉も同時に力んでしまいます。これによって、離れで微妙なブレが発生し、矢が的からはずれてしまいます。

 

弓道において、狙い目は「西半月の位(的の右半分が弓の藤によって隠れるように)」と言われています。しかし、このことにこだわりすぎて、「目」でその位置を合わせようとしすぎると、眼球自体が力み、他の筋肉にも力みが発生します。そのため、足踏みを合わせる動作を含め、極力稽古では「眼球周りの筋肉」を使いすぎないように心がけるのが良いです。

 

目に頼らずに、真っすぐ脚を踏む方法

では、そのようなときにどうすれば、目に頼らないようにして、真っすぐに立つことができるでしょう。そのときに役立つ内容で祝部範士の
「目縄を引く」があります。

 

やり方は以下のようにします。

 

・的を見る(ぼんやり見るようにする)

 

・的を見たら、頭の中でその的から射位までを結んだ仮想線を引く

 

・それを信じて、左足先をその仮想線上に合わせて踏み、右足も同様に踏む

 

矢を番えた弓を両手にささげたまま、頭を左にして的を見込み、気合いを抜かずにその的から射位まで目筋を引く。これを目縄(めなわ)を引くといっている。〜祝部範士

 

通常、足踏みでは的から目を離さないようにして見ます。しかし、先ほど申し上げたとおり、目で的を真っすぐに見ているとしても、多少のずれが発生してしまうのはしょうがありません。そこで、的の中心と想定した仮想線を頭の中で引き、それに合わせて引くようにします。

 

目縄をちゃんと引いたのであれば、その延長線上に右足を置けばいいわけです。そのため、足踏みで右足を踏むときは目は的から離さないように踏みます。しかし、祝部範士の方は足踏みでこのように話しています。

 

目は的より離さず、足は足の働きで踏み締めよとの教えもあるが、よくないことであろうと思う。よろしく目縄で引き戻した目でたっぷりと右足を見定めて踏むべきものであろう。〜祝部範士〜

 

さらに、このような教えを古くでは、「蜘蛛の曲尺」と言います。蜘蛛が巣を作るための「糸」を引くときに、目的物にめがけて糸を引き、そこに自分の足を乗せてその糸を止めるようにします。この糸を「仮想線」に見立てて、その上に両足を乗せている様を「蜘蛛の曲尺」と説明しています。

 

もし、顔を的方向に向けたまま足踏みをしても、右足がそのときずれてしまい、それがわからないまま引き分けてしまうと体の軸が崩れてしまいます。それならば、しっかり右足の位置を確認するべきだと話しています。

 

右足の線をそろえる作業にしても、的を見て自分の脚を定める動作にしても、あまり見ているものや「目」に頼らないようにしてください。自分の見ているものは見ているようで見ていないと理解することで、より正確に、素直に弓を引くことにつながるのです。

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