「伸合」「詰合」の考え方を射に取り入れる具体的な方法

矢の長さを引ききった「会」の状態に入った時、さらに、弓を引き続けようと考えるのは大切です。では、どうやって弓を押し続けていくのか?その鍵となるのが「伸び合い」「詰め合い」です。

「会において重要なことは伸び合いと詰め合いである。」

伸合、詰合、あなたはこの言葉を理解できていますか?おそらく、弓道連盟でよく使われる「伸合」「詰合」とは、こんな具合でしょうか。

・もっと伸びあってー

・弓を引いたらそこから張り合う、詰めあって

これ、はっきり言って意味がありません。こんなことを言ったって受け手は何をしたらいいのかわからないからです。第一、詰め合う、伸び合うってどこを差して言っているのでしょう。弓道家特有の曖昧なこととは曖昧のままにして受け手にさせる指導はやめにしましょう。

ただ、物理的に考えていけば、詰め合い、伸び合いで何をしないといけないかは明確になります。一応、この内容を勉強してみてください。

何も考えないようにすると「詰め合い」「伸び合い」ができるようになる?

まず、詰め合い、伸び合いの生かし方について解説してくと、

1、最初は詰め、伸びという言葉を考えずに引く

2、左肩を下げて押す。右手は右肩に近づけて、そこから右肘をさらに横に引き続ける

1、2の内容は共に、「強く意識するな」ということです。今からお話することは、意識的にやろうとすると98、7パーセントの確率でできないからです。あくまで、矢の長さいっぱい引くことだけ考える。そうすれば、1、2の現象が起こると思ってください。

では詰め合い、伸び合いの意味を詳しく調べてみましょう。二つの言葉の意味を解説されている本を見ると、

会とは射の極地であって、・・・・「我忘吾」の境地に悟入し、天上天下唯我独尊の心境である。この境地に入ればすでに理屈は延べられない。小我を捨てて作為的なことをせず、ただ誠を尽くして無我の境に入るのである。(弓道教本二巻ーP129より)

会は何本引いてもなかなか一様にならない、その出来ばえは「息合い」と「詰め合」の一致によって定まるもので、会のとき空になって離れるのが最も肝要である。(弓道教本二巻ーP131)

この中の、このキーワードを取り上げてみましょう。

・小我を捨てろ、作為的なことをするな、誠を尽くせ

ほら、ここにも書いてある通りです。「作為的なこと、余計なことをするな」と書いてあります。だから、余計なことをせずに、矢の長さいっぱいに引くことを意識してください。

誠を尽くせと書いてある通り、「今できる最大限のことをやれ」と書いてあります。なので、矢の長さいっぱいに引いて、さらに引き続けようと思ってください。

というのも、会の段階で何かの筋肉を詰めたり、伸ばしたりするのは無意味だからです。

何故ならば、会では弓の反発力が最大限にかかっている状態です。すでに体の内部の筋肉に力が入っている状態で左腕や左手を動かしたら、次の離れに何も繋がらない「無意味なぶれ」になると想像がつきます。

そもそも、この言葉の意味をしろうとするのが間違っています。まず、この意味がわかりますか?会とは理屈、理論を超えた究極の状態とよく指導者が経験の浅い方にいいますが、その言葉の通り要するにわからないものです。

つまり、「詰め合い」「伸び合い」と言われても具体的に意味を調べようとすると、難しく考え込んでしまいます。そうすると、弓を素直に目一杯に引く気持ちが薄れます。そのように、弓を引くことに甘えが出てしまうと、離れで余計なぶれが出てしまったり、緩んでしまいます。

あまり考えないようにして弓を引き続けてください。

間違った「詰め」「伸び」の解釈

そのため、弓を引いている時に間違って「詰め」と「伸び」を解釈してしまう人がいます。

まず、「詰め」という言葉、この時に何かした筋肉を詰める=固めると意識して、じっと待つようにしてさらに弓を押し続けようとしません。そして、待っていると離したくなる時がきて、「気力が充実してきた」と解釈します。そうして、離れて的に中るのを「詰め」と解釈します。

先ほどの文章を見た通り、このような状態は今できることを放棄して「ただ待っている状態」ですね。そのため、このような解釈はやめましょう。

このように解釈をした結果、弓がどんどん引けなくなって、離れが緩んでしまった人は数えきれないほど見てきたからです。

あるいは、「伸び」という言葉、この言葉をまに受けて、会に入ったらさらに「弓を押し込もう」と思います。すると、肩関節が外れて上に浮いて腕の付け根が突っ張った状態になります。

あるいは弓をおしこもうとした結果、左母指根でおしこもうとして、無駄に親指付け根に力が入ってしまいます。すると、離れたときに、左手が不用意にぶれてしまい、矢は真っ直ぐに飛びません。

こうすると、左胸に力が入って、両肩の線が的からずれてしまうため、矢がまっすぐに飛びません。

もし、弓道の高段者で「詰め合いは〜伸び合いは〜」と平気でいう人は専門用語を使う人ほどその内容をわかっていません。このようなことをいう人の具体的アドバイスは実際にやると筋肉を痛める非現実な内容ばかりです。聞く耳を持たず、無視しましょう。

ビジネスの世界でいうコンサルタントと同じです。「SWOT分析すると」「キャリブレーションを意識して」とか。そして、そういうことをお話するコンサルタントは皆、飲食店や店舗を開業したことがありません。専門的で実用的でない事ばかり言います。これと弓道の高段者は同じです。

極論を言います。伸び合い、詰め合いという言葉を知ったところで何になりますか?この言葉を知ったところで、引いている最中に「何か体が楽になった感覚がする」訳ではないですよね。その言葉を表面的に捉えて中身を調べないように、無理なことをしないようにしましょう。

左肩から押す

ただ、強いて会の最中に意識してもいいことが二つあります。一つ目が「左肩を下げて押す」ことです。

矢の長さいっぱい引ききってさらに左右に押し合おうと思った時に、一度意識的に左肩を下げてください。そのあと、左肩から意識して的を押していってください。すると、後1〜3センチほど肩関節から左腕が的方向に伸ばせるのが体感できます。

この理由は人の肩関節には多くの筋肉が詰まっており、意識しやすいからです。

肩にある筋肉量は腕の筋肉量に比べて2〜3倍あることがわかっています。左肩を下げることで、より腕関節が肩関節にはまり込みます。

加えて、弓の反発力が二番目に反発力にか狩るのが「左肩」です。左肩は弓を開いている最中に中心部に位置するため、一番上に浮き上がりやすいです。そのため、左肩は意識しなかったら、いつの間にか浮き上がっている可能性があるのです。何かしら押しにくい、離れが緩んでしまう、

ちなみに、弓道教本の引用元になった射學正宗の文献には「左肩を下巻きして押す」という言葉があります。さらに、左肩を下げて押すための練習法もあるほどです。左肩は、会の中で意識して良い場所と言えるでしょう。

さらに、弓を押していくときに、左母指根を意識して押すようにと意識しました。結論からいうと、左肩から押すようにすると、左母指根に一番力がこもります。さらに、離れるときに、気持ちよく左付け根が伸ばされます。

先ほどお話した、「左母指根で弓を押す」の正しい意味がわかります。なぜなら、この言葉の通りに行おうと親指だけで弓を押しこもうとすると、左手に弓の反発力がかかりすぎてしまい、左親指付け根の筋肉が無駄に力みすぎます。

左手は引いている最中に一番に負担が強い部分です。左手は弓と直接接しているからです。そのため、親指だけ不用意に力を入れることをしてはいけません。

ただし、左肩から押すのならありです。左肩から押しても左親指付け根を的方向に動かすことできます。つまり、親指とは違う筋肉を動かすことで、結果的に左親指の付け根に負担をかけずに弓を押すことができるのです。このような身体の使い方を意識して、弓を押して見るようにしてください。

ただ、このようなことを知ったからといって、詰め合いとう言葉を理解したつもりにならないようにしましょう。確かに、腕関節が肩関節にハマった感覚が強くなるため、何か「詰め」たような感覚になるかもしれません。しかし、それは幻想なので、ひたすらに弓を引くようにしてください。

何故、詰めあっているのに伸びることができるのか?

次に、不思議に思うのが「なぜ、詰めあっているのに伸びる」という言葉が出てくるかです。言葉の意味だけを考えると、相反しているように思います。そのため、この言葉を間違えて解釈すると、弓を引ききって肩がガチガチに固まっているのに、そこから伸びようというよくわからないことをしてしまいます。

ただ、この言葉をなんとなく説明するならば、右手と右肩を近づけると、右肘を後方に動かしやすくなります。

実際にやってみるとわかりますが、右肘は右手が肩に近づくほど動かしやすくなることがわかっています。会の形を作って、右手を右肩から少し離して右肘を動かしてください。次に、なるべく右手を右肩に近づけて右肘を動かしてください。

おそらく、「右手を肩に近づけると、右肘が非常に動かしやすくなる」と体感できます。

理由を解説すると、右手が右肩から離れている場合、右手や腕の関節が動くことによって、右肘関節が動きます。しかし、右手が右肩まで近づくと、肘を動かすときに肩や胸郭まで連動して動きます。

つまり、肩や胸といった筋肉量が多い部分が働きやすくなるため、結果として右肘が動かしやすくなります。

この原理を取り入れると、右手を近づければ近づくほど、つまり弓を引けば引くほどどんどん右肘は後方に動かしやすくなるようにできると解釈できます。実際に、私は30kgの弓を使って稽古をしますが、会に入ると、右肘をさらに後方に意識的に入れられます。

なぜなら、30kgであっても右手は右肩に近づいているからです。この条件になったら右肘は動かしやすくなり、さらに右肘を後方に入れられます。

もしかしたら、完全に矢の長さいっぱいに引けているのにさらに、腕を伸ばせることを「伸び合い」の伸びと表現されているかもしれません。しかし、こう考えるのもやめてください。なぜなら、こうお話すると、右肩を無理やり右手に近づけて引こうとする人が出てくるからです。

強い弓を使って稽古されたい方は、最初にこの方法で稽古されても良いですが、続けてくると、右肩関節が上がりすぎてしまい、右手首が内側に曲がりやすくなります。その結果、矢を無理やり押し付ける「篦じない」の現象を起こすかもしれません。そのため、気をつけるよにしてください。

以上のように理解すれば、確かに、体の中で「詰めた」感覚や、さらに腕が「伸びれる」感覚はあるかもしれません。しかし、これを作為的にやるのはやめてください。あくまで矢の長さいっぱいに全力で引くことを意識してください。

矢の長さいっぱい引こうとする→会に入ったらさらに弓を押そうと思って、左肩の付け根から押そうとする→それと同時に右手が右肩に近づいてくる→近づくほどにどんどん右肘を動かしやすくなり、後方に入れやすくなる

といった感じに「矢の長さいっぱいに引いて入れば自然に起こるものだ」と解釈してください。そうすることで、余計な力みなう、弓を押し開くことができます。ぜひ、実践してみてください。

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